阪神のスタッフ会議が甲子園近くのホテルで行われた。2月1日のキャンプ・インに向け、1、2軍の振り分けも明らかになり、いよいよ球団初のリーグ連覇へ向け、チームとして動き出した格好だ。

球団史上2人目の日本一監督として多忙なオフを過ごした指揮官・岡田彰布ももちろん、参加。会議後には虎番キャップたちに囲まれ「キャンプに関して話が出だすと、いよいよと思うけどな」などと話した。

そんな話の中で注目したのは岡田一流の心遣いである。岡田は昨秋の安芸キャンプから高卒2年目19歳の門別啓人を絶賛。1軍キャンプに参加させることを示唆していた。その通り、門別の1軍スタートが決定したのだが、そこでもう1人、同じ高卒2年目、19歳の茨木秀俊も1軍メンバーに選んだ。

誰を選ぼうが岡田の勝手だが昨年2試合に投げた門別に比べ、茨木は1軍未登板。もちろん、ともに今後が期待される存在ではあるが正直、茨木に関しては「おや」という気もしなくもない。そこで岡田が発した言葉に、ははあと思った。

「う~ん。まあ、一番年齢的に下になるからなあ。それやったら2人、入れろ言うたんや。キャッチボール相手にしろって(笑い)。1人だけな、なんかポツンとな。お~ん」

それでなくとも初めての1軍キャンプは緊張するもの。そこに加え、プロ野球は世の中であまり見かけられなくなった? 年功序列のハッキリした社会だ。19歳の若者が単独といった様子で参加するのはメンタル面で厳しいはず。だからこそ同期入団で同い年、ポジションも同じ相手を加えたということである。

ここに岡田の真骨頂がある。それは「プレー以前に気持ちを楽にさせてやる」ということだ。昨年もキャンプでノイジーに右投げ投手を投げさせない、若い選手をスタメンで使う場合、ファームで対戦経験のある投手のときにする、などといったことだ。

「昭和スタイル」と思われている岡田だが、このあたりは実に“今風”だ。大げさに言えば、そういう心遣いは時代に関係ないということも教えられる。期待の集まるドラ1新人・下村海翔のファーム・スタートも同様の思想からだ。

キャンプではなく、開幕、そして1年間を戦い、その先の連覇が目標。そのための策を岡田はじっくりと取り始めている。(敬称略)

【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

キャッチボールする門別(撮影・藤尾明華)
キャッチボールする門別(撮影・藤尾明華)