常総学院・大川慈英(2021年3月27日撮影)
常総学院・大川慈英(2021年3月27日撮影)

スポーツ万能のDNAは半端ではなかった。元総合格闘家の父・政則さん(53)、アトランタ五輪のバレーボール日本代表・千穂さん(50=旧姓・鳥居)を両親にもつ常総学院(茨城)の大川慈英(じぇい)投手(3年)は、2回戦の中京大中京(愛知)戦の5回から2番手で登板した。

「自分の持ち味は直球で三振を取ること。腕を振り切って投げました」。大舞台にも動じず、3回1失点。自分の球を投げ切り、5-15の大敗にも「チームに流れをもって来られるように投げた。最後まで腕を振り切れたことは成長したところ。夏までに変化球を磨きたい」と前を向いた。

プロ4球団でプレーした島田直也監督(51)は、昨年3月、投手コーチに就任した時に見た大川の印象を「体にバネがあり、制球力もある。いい投手だと思った」と振り返る。

引き継いだスポーツセンスは抜群だ。小3までは母がバレーを直接指導。ランニングやトレーニングにいつも一緒に連れ出した。近くの中学にバレー部がないことがわかり、知人の紹介で小4から野球を始めると、「基礎は同じ。体の動きは共通している」とアタックの瞬間の体のひねり、力の入れ方などを指導した。

中学からは「寝技の世界一決定戦」と称されるアブダビコンバットに出場経験のある父がウエートを本格指導。「脱力の方法を教わり投球に生かしている」と大川。細身の体も、ウエートで体幹を鍛え制球力が磨かれた。

両親の一番の教えは精神面だ。「練習は自分が一番下手だと思って練習しなさい。試合では一番うまいと思って。自分のやってきたことを信じてプレーしなさい」。幼少時より言い聞かせられた。負ければ「日ごろの練習がなってないから」と一蹴された。しかし、そんなスポ根一家で育ったからこそ、この大舞台で堂々と自分の直球を投げ込むことができたわけだ。

両親がアルプスで見守る中での登板に大川は「昨秋の関東大会までは焦って投げることもあったんです。でも、センバツではマウンドに上がると落ち着いて周りにも声かけもできた。少しは成長したところを見せられたと思います」。最後に、ニッコリ笑った。

常総学院対敦賀気比 アルプスから息子・大川慈英投手に声援をおくる、元アトランタ五輪、バレーボール日本代表の、母・千穂さん(撮影・保坂淑子)
常総学院対敦賀気比 アルプスから息子・大川慈英投手に声援をおくる、元アトランタ五輪、バレーボール日本代表の、母・千穂さん(撮影・保坂淑子)