第97回全国高校野球選手権の宮城大会(開幕7月7日)の組み合わせ抽選会が25日に行われた。部員不足の南郷が、日本高野連の特別措置(単独廃校ルール)で、小牛田農林から1年生4人を“レンタル”。3年ぶりの夏に挑む。初戦は7月11日の2回戦で、柴田農林と対戦する。

 ルールに救われ、正部員2人の南郷が12年以来3年ぶりに夏の大会に出場する。この日の抽選で初戦の相手は柴田農林に決定。小野麗也主将(3年)は「いいクジを引いてこい、と先生や友達から送り出されました。チームもさらに意識が高まっていくと思います」と声を弾ませた。

 春の段階では部員は小野と加藤大幾(1年)の2人だけ。夏に向け、情報処理部や軽音楽部から助っ人4人が集まったが9人に満たず、他校と連合チームも合意に至らなかった。佐藤栄聡監督(40)が、最後の手段として思い浮かんだのが他校から選手をレンタルできる「単独廃校ルール」。夏の宮城では初のケースだが、同じ美里町内にあり、自身の母校でもある小牛田農林に選手派遣を要請すると快諾。高野連から許可をもらい、出場が決まった。

 3年生の小野にとって最初で最後の夏となる。入部以来、春夏秋通じ公式戦出場はゼロ。この春加藤が入部するまで、部の活動はほぼなかった。それでも「ブランクがないように」と最後の夏を見据え、毎日家でランニング30分、素振り400本、投球練習を繰り返してきた。「3年間で一番うれしい。小牛田農林さんに感謝です」。ユニホームを着て、出られること自体が大きな喜びだ。

 小野が遊撃、加藤が三塁を守り、バッテリーや外野は助っ人や小牛田農林選手に任せる予定だ。週に3度の合同練習で「夏までコミュニケーションを高めていきたい」と小野は意気込む。南郷は91年から12年まで22年連続初戦敗退中。「久しぶりの勝利を届けたい」とまず1勝を狙う。【高場泉穂】

 ◆宮城県南郷高校 1931年(昭6)、南郷村立国民高等学校として開校。86年に現校名に改称。普通科と産業技術科があり、現在の生徒数は171人(女子60人)。野球部は48年創部。夏の最高成績は3回戦。所在地は宮城県遠田郡美里町大柳字天神原7。遠藤吉夫校長。

 ◆単独廃校ルール 廃校となることが決定しており、選手が9人以下のチームが、近隣校から野球部員の派遣を受けることができるもの。00年に制定された。12年には、適当な相手校がないなどの理由で連合チームが組めない部員不足校にも、このルールが適用できるようになった。ただし、母体校の部員は最低5人は在籍しているものとし、他校から借り入れても10人を超えないこととする。