5年ぶりの甲子園出場を狙うシード校西日本短大付が小郡を下した。OBで昨年の楽天ドラフト2位小野郁投手(18)の魂を継承するエース左腕、武富章剛(3年)が8三振を奪い3安打1失点で完投。先輩から託された甲子園出場の思いを胸に躍動した。

 小野に甲子園出場の思いを託された武富が5年ぶりの聖地へ、3回戦突破に貢献した。福岡大会準々決勝で敗れた昨夏、武富は小野から「お前たちに託すしかないから、思う存分やってくれ」と伝えられたという。右手中指のマメをつぶし「血染めの力投」を続けた勇姿が、脳裏に焼きついている。今でも連絡をもらう先輩のために…。「あこがれで背中を追いかける目標の選手。代わりに(甲子園へ)絶対行きたい」と気合十分だった。

 昨秋からエースとなり、その魂を引き継いだ。気迫が投球に乗り移っていた。今夏の初先発に初回から全開だ。変化球を低めに集め、特に緩急2種類を使い分けるスライダーで相手打線を翻弄(ほんろう)。6回途中までヒットを許さなかった。力みから球が浮いた8回に1点を失ったが、西村慎太郎監督(43)は「よく投げた。最後まで集中が切れず投げてくれた」とたたえた。炎天下、109球の粘投だった。

 パンチ力も兼ね備える。今春から1番を打つが、昨夏は4番を務めた。小郡戦は4打数1安打に終わったが、筑紫丘との初戦で高校通算26本目の本塁打をぶち込んだ。春先にソフトバンク柳田のフルスイングを意識した打ち方に変更。一気に8本塁打を量産した。「打って投げて活躍したい」と、投打に奮闘している。

 冬場は走り込みや筋力トレーニングに加え、ボールやゴルフボール2個を左手で握りながら走り、スライダーの感覚を磨いた。情熱と努力が成果を生み、先輩の果たせなかった夢をつかむ。【菊川光一】

 ◆武富章剛(たけどみ・あきまさ)1997年(平9)6月21日、鹿児島県生まれ。佐賀県移住後、小4から多久北部小で野球を始める。多久中央中で黄城ボーイズに所属し1年と3年で日本代表として世界少年野球出場。西日本短大付では1年夏から外野手のレギュラーで昨夏は4番も務めた。新チームからエース。50メートル走6秒0。遠投80メートル。左投げ左打ち。177センチ、80キロ。家族は両親と兄。