初出場の津商(三重)は強豪智弁和歌山を下し、県勢夏通算30勝した。

 憧れだった甲子園で全力で校歌を歌った。津商が初の大舞台で出場21回、2度の優勝を誇る強豪・智弁和歌山に逆転勝ち。10年に宮本健太朗監督(37)が就任する前には、部員数が1ケタだったこともある公立校が大金星を挙げた。

 「出来すぎ。高校生のすごさを感じた。(9回にいなべ総合に逆転した)三重大会の決勝も劇的な勝ち方だったが、その夢の続きを見ているようです」

 4回から毎回得点。7回にエース左腕を降板へと追いやった。昨秋の県大会準決勝、今春の同決勝で、左投手3人を擁すいなべ総合に敗戦。打撃マシンの位置を一塁側にずらし、左投手のリリースポイントを想定した練習を行うなどし、左対策は万全だった。

 立ち上がりはヒヤヒヤだった。エース坂倉が初回、いきなり3連打を浴びて2失点。「相手ベンチを見たら、高嶋監督がいつもの仁王立ちをしていて怖かった」。

 7回に両手親指がけいれんし、緊急降板するハプニングもあったが、2番手石川がリードを守り切った。

 チームの合言葉は「1人1役全員主役」。浅尾美和らがOBで全国大会常連の女子バレー部と同じく「全力津商」のスローガンを掲げる。守備の1歩目、初球にかける気持ち、そして全力で歌う校歌…。全力で戦ってつかんだ、初の甲子園1勝だった。【福岡吉央】