興南(沖縄)が石見智翠館(島根)を下し、16強入りを決めた。1点を追う9回裏に追いつき、代打の城間楽人外野手(3年)がサヨナラ打。エースナンバーをつけたこともある代打要員の背番号18が、今夏初出場で大仕事をやってのけた。春夏連覇した10年以来、甲子園12連勝だ。

 8回に打ち込まれたトルネード左腕、比屋根を救ったのは、ベンチ入りも崖っぷちだった興南・城間だった。同点で迎えた9回2死一、二塁のチャンスで左前に人生初のサヨナラ打。かつて比屋根とエースの座を争いながらも、投手をクビになり、代打要員として生き残った背番号18が、堂々の働きで、喜びを爆発させた。

 「ストライクが来たらフルスイングしようと思った。こんなこと人生で初めて。甲子園は外野まで人で埋まっていて緊張したし、打席に入ったら足が震えたけど、出たら比屋根を楽にさせたいと思っていた」

 相手はめまぐるしく投手を代えてきたが、準備は万全だった。「誰がきてもいいように、ずっとベンチで見て特徴を頭に入れていた」。巡り来る1打席を想定し、すべてをかけていた。

 中学時代はジュニアオリンピック男子やり投げで全国王者に輝いたこともあるほどの強肩で、エース候補として興南に入った。昨秋には背番号1もつけた。だが制球力が上がらず、クビを宣告されて捕手に転向。捕手でも送球難を克服できず、強肩を買われて外野を任されたが、積極的な守備ができず、最後にありついたのが代打の役割だった。

 公式戦出場は春の九州大会以来。今夏の沖縄大会は出番がなく「(20人から18人に絞られる)甲子園のメンバーから外されるかと思っていた」という。我喜屋優監督(65)は「投球練習もしておけよと言ったが、ピンチで投げるのが怖くて練習していなかった。こいつを削ったろかとも考えたが、ひと振りにかけようと思って残した。裏でバットを振っているのは知っていたし、運命ですね。運を持っているのかな。今日は申し訳ないけど、バンザイしてしまいました」と期待に応えた城間に目を細めた。

 城間は5年前の春夏連覇を見て興南に入った。チームの合言葉は「もう1度、強い興南をつくろう」。役回りがどれだけ変わろうと、最後まで諦めなかった男を、野球の神様は見放さなかった。【福岡吉央】

 ◆城間楽人(しろま・がくと)1997年(平9)8月23日、沖縄県生まれ。赤道ゴールドスターズで小2から野球を始める。具志川中までは投手兼捕手。興南では2年まで投手、3年から外野手。中学時代、ジュニアオリンピック男子やり投げで75・80メートルを投げ、全国優勝に輝いた。180センチ、78キロ。右投げ右打ち。家族は両親と姉2人。

 ◆興南が甲子園12連勝 興南は10年春(5勝)同夏(6勝)の春夏連覇以来の出場で勝利。甲子園の春夏通算12連勝は(1)PL学園20連勝(2)池田15連勝(3)中京大中京、PL学園=各13連勝に次ぎ、法政二、箕島などに並ぶ5位タイ。