熊本地震からの復興を誓う熊本大会が開幕した。大きな被害を受けた阿蘇地域に近い大津は、震災による大けがで部員が離脱するなど練習不足のまま大会へ。初回に押し出し四球で先制するも8回コールドで熊本西に敗れたが、復興への歩みを進める県民に勇気と感動を与えた。

 曇り空を吹き飛ばすかのように大津ナインが気持ちを込めてプレーした。一時は開催も危ぶまれた藤崎台県営野球場の外野フェンスには「がんばろう!! 九州!!」の横断幕。8回コールド負けを喫したが、試合後のあいさつに向かった三塁側スタンドからは見守った父母から「お疲れさま」「よく頑張ったぞ」と温かい言葉が送られた。

 開会式で熊本地震の犠牲者に黙とうがささげられた。その際、主将の宮崎雄大(3年)は「亡くなられた方の分まで自分たちが生きていこう。試合に勝って熊本に元気を与えたかった」と気を引き締めた。長谷川潤監督(29)から「気持ちで行け」と鼓舞され試合開始直後からエンジン全開だ。1回、相手エースの不安定な立ち上がりを攻め、2死満塁から6番北原優志投手(3年)の押し出し四球で先制した。相手の熊本西の鬼塚博光監督(50)も大津の気迫に「気持ちで攻めていた。うちの選手が受け身にまわった」と感じるほどだった。

 生田真統外野手(2年)は16日未明の地震で壊れた扉の割れたガラスで右膝を7針縫うけがを負い、同時に右肩も打撲。1カ月離脱し、連係プレーの練習は十分にできなかった。被害の大きかった南阿蘇村から通う選手の中には、臨時バスの運行時間で早めに練習を切り上げざるをえないものもいた。だが練習不足の不利も全員で乗り越え「家族や地域、先生のおかげで今日まで野球ができた。感謝の気持ちを忘れてはいけない」と宮崎主将。モットーにする「全球入魂」で勇気と元気を与えた。【菊川光一】

 ◆熊本地震 4月14日夜、16日未明の2度、熊本県は最大震度7の地震に襲われ、被害が甚大だった益城町や南阿蘇村などで40人以上が亡くなった。震災から約3カ月後の今もなお余震は続き、9日にも熊本で震度4を観測した。サッカーJ2の熊本が約3カ月、被災した本拠地のうまスタを使えないなどスポーツ界にも大きな影響が出た。