今夏は伝統のパワー野球全開だ。「筋肉ゴリラ」の愛称を持つ東海大札幌の代打小林由来(ゆうら)内野手(3年)が8回、バックスクリーン左へ満塁本塁打。南大会では6年ぶり9人目、代打としては初の満弾で7-1と北海学園札幌にとどめを刺し、3年連続準決勝進出を決めた。この日で南大会の4強が出そろい、4年ぶりに札幌勢が独占。

 元4番が、意地の豪快アーチで試合を決めた。2点リードで迎えた8回1死満塁、7番長谷川に代わって打席に立った小林は「監督から『ホームランか三振でいい』と言われて、開き直った」。持ち味はパワー全開のフルスイング。1ボールからの直球を、ピンポン球のようにバックスクリーン左へ打ち返した。公式戦初アーチは、大会史上初の代打満塁本塁打というおまけ付きで「完璧でした」と照れ笑いした。

 チームトップのベンチプレス110キロ、スクワットは200キロを誇る。付いたあだ名は「筋肉ゴリラ」。練習試合を含め通算12本塁打はチームトップで、満塁本塁打は今回で3本目と勝負強さも備えたパワーヒッターだ。背番号3で出場した春の全道大会では1回戦から4番を務めたが、7打席連続無安打で、ついには準々決勝の終盤のチャンスに代打を送られた。チームはサヨナラ勝ちも「素直には喜べなかった」。以来、打撃の基本へ返り、連日のように居残り練習でバットを振り、大きくなりすぎたスイングの修正に励んだ。

 今夏、欲しかった「3」は、春に自分の代打として活躍した内藤の手に渡ったが、苦労を惜しまなかった姿に、大脇英徳監督(41)は「ずっと悩んで頑張ってきた選手。『ここは』と決断した」と、しびれる場面で復活のチャンスを与えた。三塁コーチスボックスから突然、ベンチへ呼び戻された小林は「いきなりだったので、3スイングくらいしか(素振りが)出来なかった」と苦笑い。指揮官の“ひらめき采配”に、緊張する暇もなかった。

 3年連続の4強入りだが、今年はひと味違う。「今年は打のチーム。打撃には自信がある」と小林。かつて全道最強の強打を誇った縦縞の伝統が今夏、よみがえる。【中島宙恵】

 ◆南・北北海道大会の満塁本塁打 北海道高野連によると、各地区予選を除く南・北大会に限れば、東海大札幌・小林が史上17人目。すべて先発出場で4番打者が最多10人。今年の北大会2回戦で記録した釧路湖陵・佐藤雄太は9番打者で初だった。