雄たけびが止まらない。第98回全国高校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)の愛知大会は29日、準決勝が行われ、東邦が3-0で栄徳に競り勝ち、春夏連続甲子園出場に王手をかけた。「ふじっしー」こと、エース藤嶋健人投手(3年)が9回を6安打9三振無失点と今大会初の完封で勝利に導いた。今日30日の決勝は愛工大名電と対決する。

 最後はこん身のガッツポーズに雄たけびも上げた。3-0の9回1死二、三塁。東邦・藤嶋に最大のピンチが訪れた。「どのチームも最後の意地がある。それに負けないようにいった」。勝負球のナックルカーブで2者連続の空振り三振。気迫勝ちだった。

 8球団の編成担当が見守る中、何度も走者を背負ったが、誰一人と本塁を踏ませなかった。7回の先頭、松本凌弥内野手(3年)が先制本塁打を放ち、ようやく援護をもらった。その回、1死満塁で藤嶋にも打席が回ると、1度もバットを振らずに押し出し四球を選び3点目。「ヨッシャー!」と叫び一塁へ走りだした。今大会は厳しい攻めもあり、真っ向勝負をしてもらえない。それでも決して焦らずに、貪欲に1点を奪いにいった。

 30日の決勝は愛工大名電と戦う。強力打線相手に森田泰弘監督(57)は「藤嶋と松山の2人で抑えてくれれば」と総力戦で挑む。これまで継投でつないできたが、この日は藤嶋1人で143球を投げきった。「あと1試合で人生が決まる。捨て身というか、死ぬ気でみんなと勝てるように戦っていきたい」。連投もいとわない。1年夏以来の甲子園へ、あと1勝を死にものぐるいでつかみにいく。【宮崎えり子】