激戦神奈川の決勝は横浜対慶応に決まった。

 打力では慶応だって負けていない。同点の3回1死。4番正木智也外野手(2年)が、泳がされながらも外角直球を左中間席上段へ放り込んだ。「気持ちよかった。タイミングは少しずれたけど、うまく引きつけて打てました」と自画自賛の勝ち越しアーチだった。

 2戦3発。2試合連続の決勝弾で高校通算本塁打を20号にのせた。準々決勝では逆転3ラン含む2発5打点で、昨夏甲子園優勝の東海大相模に引導を渡した。森林貴彦監督(43)は「存在感、威圧感、変化球の対応。4番に必要なものが全部足りなかったのに、うれしい誤算」とたたえた。

 開花した。色白の肌にゆるふわな髪。穏やかな目をした16歳はバットを握ると別人になる。「春も夏前も、初戦も打てなかったんですけど。準々決勝でつかんだんです」。ミートの瞬間、体が前に突っ込んで三塁側へのゴロが多かった。体重を後ろに残して打つ感覚を、ふっと思い出した。

 中1から鍛えた手首の強さと180キロの背筋で、見違えたように打球が飛んだ。初めての夏で8年ぶりの決勝に導いた森林監督は、横浜について「10回やって1回勝てるくらい。うちが挑戦者なのは間違いない」と言った。だが6戦中5戦で2ケタ得点を挙げた慶応打線の中核には、頼もしい正木がいる。【鎌田良美】