八戸工大一のドラフト候補右腕古屋敷匠真(3年)が弘前東戦に先発し、9回4安打15奪三振1失点で完投した。視察に訪れたプロ4球団のスカウトを前に、6回には自己最速を1キロ更新する150キロをマーク。27日の青森山田との準決勝を突破し、2年連続の東北大会出場を狙う。

 夢の大台に到達した。6回先頭、古屋敷が相手3番に投げ込んだ4球目。空振り三振を奪った直球が、DeNA河原隆一スカウトのスピードガンで自己最速の150キロを計測した。常時140キロ前半の直球で押しまくり、今春の公式戦初完投で15奪三振。試合後に球速を伝え聞いた剛腕は「すごくうれしい」と笑顔を見せたが、すぐに顔を引き締め「夢は甲子園で158キロを出すことなんで」と平然と言ってのけた。

 昨秋の県大会初戦で宿敵八戸学院光星に打ち込まれ「分かっていても打たれない直球」の研究を始めた。出した結論は「球のスピン」。今春からリリースの瞬間を意識し「しっかり指でたたいて球の回転数を上げたい」と球を離すギリギリまで力を伝えるようにした。「去年まではただ投げていただけ。今は直球でファウルがとれるし、芯に当たっても飛ばなくなった」。手応えを口にする古屋敷の右手人さし指と中指の指先にはマメの上にマメができ、黒ずんで硬くなっていた。

 視察に訪れていたスカウトは古屋敷の剛球を絶賛した。DeNA河原スカウトは「馬力がある。今年の全国レベルでも150キロ出す投手はなかなかいない」。巨人柏田貴史スカウトも「東北の高校生右腕でNO・1。いい投手に決まっている」と興奮気味に話した。

 日本ハム大谷翔平は花巻東在学中に「最速160キロ」ではなく、あえて「最速162キロ」を公言していた。古屋敷も同じ理由で「最速158キロ」を口にしている。「155キロを出すには、158キロを出すつもりでやらないと。壁は必ず来るけど、自分で練習を工夫して成長していきたい」。堂々と宣言する古屋敷の目からは、自信がみなぎっていた。【高橋洋平】