2連覇を狙う横浜(神奈川)が黄金ルーキーの抜てきで好発進した。最速143キロの1年生左腕、及川(およかわ)雅貴投手が南戦に先発し、4回1安打無失点の好投を演じた。同校では異例の“ルーキー開幕投手”で勢いをつけた。

 チーム内で「オヨヨ」と呼ばれるかわいさは、みじんも感じさせなかった。先発の及川は初回、先頭に左前打を許し、いきなり2死満塁のピンチを迎えた。6番武田を直球で右邪飛に打ち取ると、苦笑いしながらベンチへ引き揚げた。

 及川 緊張はしませんでした。縦のスライダーを2、3球投げましたが、あとは直球だけ。立ち上がりが良くなかったけど、立て直していい投球ができました。

 4回を1安打6奪三振で無失点に抑えた。名門横浜で偉大なOBの愛甲猛氏や松坂大輔(現ソフトバンク)でも経験していない、夏の「ルーキー開幕投手」を務め上げた。

 公式戦初登板初先発した春季大会決勝では、東海大相模に2回途中7安打6失点(自責4)を喫した。「もっと重いボールを投げないといけない」と打ち砕かれた。夏へ向け、夜ご飯後もパンをかじった。体重を2~3キロ増の73キロにすると、直球の最速も自然と3キロ速くなった。

 中学時代は侍ジャパンのU15(15歳以下)代表でエース格として活躍。ワールドカップ準優勝に貢献した。また、高校入学前にはテレビ朝日系「ビートたけしのスポーツ大将」の企画でプロと対戦。中日平田から直球で空振り三振を奪い、西武森にも臆することなく内角をついた。「楽しかったです」とケロリと言い放つ強心臓ぶりが大物感を漂わせる。

 前日には、OBで楽天ドラフト1位の藤平尚真投手(18)が激励に訪れた。ドラフト候補の4番増田珠外野手(3年)は3安打2打点を挙げ、1番の長南有航外野手(2年)も9号3ランと躍動した。就任2年目の夏を迎えた平田徹監督(34)は「及川はコーナーを突いていけば通用すると思った。初戦としては、選手たちは本当に頑張ってくれました」と2連覇へ着実に歩を進める。【和田美保】