「チーム大西」で準優勝の次は「チーム大雅」で日本一を狙う。第99回全国高校野球選手権が8日、甲子園で開幕し、北海(南北海道)の佐藤大雅主将(3年)は開会式で初めて先頭に立って行進した。昨夏は主将でエースの大西健斗(慶大1年)に導かれ準優勝。今夏は主将兼4番そして精神的支柱としてチームを引っ張り、尊敬する先輩超えを目指す。

 自身2度目の行進は堂々と前を見据え、土の感触を確かめながら歩を進めた。「歓声も含め特別な雰囲気。周りの拍手も気持ちが良かった。戻ってきた。やっと始まる」。佐藤の胸中は、緊張感でいっぱいだった昨夏とは違う。聖地の広さ、包み込むようなスタンドの視線、両翼に広がる外野の雄大な景色も冷静に見ながら、グラウンドを1周した。

 昨年は大西の後ろを行進した。「背中が大きく見えた。自分もそういう風に見られるようになりたいと思いながら歩きました」。頼れる先輩は卒業したが、代わりに昨夏を経験した6人の心強い仲間がいる。その総合力が今年の強みだ。自ら南北海道大会の優勝旗を掲げ先頭を歩き「連れてきてもらった去年とは違う。自分たちの代でつかんだという自信を持ち、みんなで協力して1戦必勝で戦う」と強い口調で話した。

 昨夏の思い出は北海道に置いてきた。甲子園準優勝時に使っていた赤茶系のキャッチャーミットは、父貢さん(44)が中学時代の息子の球を受けるために購入したものだった。大躍進を呼んだ大事なお守りだが「札幌の寮に置いてきました」。昨秋新調した紺系のマイミットでつかんだ2度目の甲子園は、新たな気持ちで勝利を引き寄せる。

 開会式直前、応援に来た父貢さん、母かおりさんと偶然、球場外で遭遇も、言葉を交わす時間はなかった。「アイコンタクトで十分でした」。無言のエールを胸に、まずは12日神戸国際大付戦に向けて、気を研ぎ澄ませていく。【永野高輔】