精密リードで鳴門渦潮(徳島)を封じる。全国高校野球選手権に出場する日本文理は9日、大阪ガス今津総合グラウンド(兵庫)で2時間の練習を行った。牧田龍之介捕手(3年)は、1回戦(12日)の相手打線を想定しながら投手陣と投球練習。チームのリズムをつくるためにも、投手陣の力を引き出す牧田のリードがカギを握る。

 1球ごとに牧田がかける声が、日本文理の投手陣を奮い立たせる。この日はエース稲垣豪人(3年)、左腕・新谷晴(2年)、右サイド原田航汰(3年)の3投手の球を受けた。1回戦の先発が予想される稲垣とは30球。「ほとんどの球種を投げさせた」。12日の試合から逆算すると、本格的な投げ込みは最後になる可能性がある。スライダー、スプリット、カットボールなど変化球を多投させた。

 鳴門渦潮の徳島大会決勝は、無料動画サイトで確認済み。「1巡目は直球主体、2巡目は変化球を増やす。オーソドックスな配球でいく」。リードの外枠はできた。勝負どころで使う球も決めた。「それは内緒です。今の状態なら心配ない」と自信をのぞかせた。

 大井道夫監督(75)は「牧田にケガをされたら困る。リードをしっかりやってくれるから」と、インサイドワークを高く買う。牧田は普段から3種類のノートをつけている。日記代わりの「野球ノート」、相手打線の「分析ノート」、三塁コーチを務める吉川龍(3年)と話し合いながら記録した「対策ノート」。試合中の確認に使う「分析」と「対策」は、背番号2をつけた今春から記し始めた。3冊とも、大阪入り後も練習後に毎日書き込んでいる。

 「僕は打力があるわけではない。だからリードで力になる」。小、中学時代からプロ野球中継を見ながらリードの研究をしていた。高校入学後、同期の川村啓真右翼手(3年)が正捕手に。強打を買われていた川村の陰で、牧田は投手陣とコミュニケーションを密に取ることを心がけた。

 「『調子はどう?』とか、意識して声をかけた。内面が分かればリードしやすい」。努力の成果が、川村に代わってつけた背番号2だ。「1回戦が楽しみ。自分のリードで勝利に導きたい」。培ったものを発揮する大舞台が迫っている。【斎藤慎一郎】

 ◆牧田龍之介(まきた・りゅうのすけ)1999年(平11)5月7日生まれ、新潟市出身。小針中では新潟江南シニアに所属して捕手一筋。日本文理では昨秋の北信越大会で背番号12をつけてベンチ入りした。今春の県大会から背番号2に。173センチ、67キロ。右投げ右打ち。