5年ぶり5度目出場の聖光学院(福島)が、春夏通じた福島県勢初の甲子園開幕戦で、東筑(福岡)に5-3と競り勝った。3-3で迎えた9回表1死二、三塁。2番横堀航平外野手(3年)のセーフティースクイズが内野安打。相手送球エラーも加わって2点を勝ち越した。史上最強打線と称されるが、14年夏の3回戦近江(滋賀)戦でサヨナラ勝ちした“お家芸”の小技で好発進した。27日の2回戦では東海大相模(神奈川)と対戦する。

 横堀がセーフティースクイズで主役となった。1ボールからの2球目。相手エース石田の得意球スライダーを一塁側へ転がした。三塁走者の高坂右京(3年)が打球を見て、勝ち越しの生還。敵失で5点目の“ご祝儀”まで得た。横堀は「投手に捕らさないことだけ考えていた。転がった瞬間、決まったなと確信しました。これまでの野球人生で一番良いプレーだと思う」と笑顔。斎藤智也監督(54)も「千両役者が、しっかりやってくれました」とたたえた。

 バントの構えからバットを引いた1球目で成功の予感はあった。相手一塁手の動きを見逃さなかった。「1球目で構えた時にダッシュしてこなかった。逆にベースに戻ったくらい」(同監督)。サインを冷静に実行するだけだった。冬場は雪降る中、通常より重い1キロバットでバント練習。手がしびれても繰り返した。組み合わせ抽選後は、マシンを135キロの高速スライダーに設定。打撃練習の1球目は集中力を高めたバント。失敗した選手には仲間の厳しい言葉が飛んだ。すべてはこの1球のために。

 「久しぶりの公式戦で僕が強引だったかな」と積極的に初球から攻め続けた攻撃を反省した斎藤監督。終盤に「本来の聖光の野球をやるぞ」の方向転換が号砲となった。勝ち越し機をつくったのも1番田野孔誠(3年)の1死一塁でのセーフティーバント。14年夏にも絶体絶命の場面を救ったセーフティースクイズの再現で、好投手をKOした。

 春夏通じ19度目の名将にとっても開幕舞台は初めてだった。開会式で体が冷えないよう、腹と背中にカイロを1つずつ付けさせるなど対策も練った。それでも前夜は深夜0時に布団に入ったが「寝坊する夢を何度も見て…10回くらい目が覚めた」。心身ともにタフな試合を乗り越えた。「やっぱり甲子園は長くいたい場所ですよ。このチームはそう簡単には負けないですよ」。東北初の日本一獲得に向け、勢いが増す開幕白星だった。【鎌田直秀】

 ◆福島勢春10勝 5年ぶり出場の聖光学院が開幕戦で勝利し、県勢春10勝を達成。そのうち同校は4勝を占めている。