札幌地区で、札幌啓北商が4-0で札幌開成中教校を下し、65年以来53年ぶりの南北海道大会出場に王手をかけた。2年生エース山崎佑人が122球で、散発5安打の初完封。試合中に声はほとんど出さず、感情を内に秘め淡々と投げきる独特のスタイルで、勝利に導いた。

 無口なエース山崎が黙々と、投げ抜いた。130キロ前半の直球とスライダーを武器に、6回まで無安打無失点。3回の3者連続を含め、計8つの三振を奪っても表情一つ変えず、雄たけびもあげず、ひたすら静かに、9回を投げ抜いた。

 「声を出さないのが僕のスタイル。普段はしゃべりますが野球のときは声を出さない方が集中できる」と言う。9回に試合を締めた際も、本塁に戻りながら捕手で先輩の井上暁斗(3年)にほほ笑むだけ。徹底した“サイレン投”で、南大会に王手をかけた。

 森田圭一郎監督(57)は「練習でもほとんどしゃべらない。謎の男」と冗談交じりに表現した。札幌平岸小3年で野球を始め、他選手がベンチで声を出していてもマイペースを貫いてきた。「黙っていても次の配球とかを考えている」と言う。互いに声を出しもり立てる高校野球の中、ブレることなく独自の無言野球人生を歩んできた。

 右肩の関節が柔らかく、腕が遅れて出て来る上に、リリースの瞬間、顔が極端に一塁側を向く。日本ハムやメジャーなどで活躍した岡島秀樹の「あっちむいてほい投法」に似ている。「誰のマネでもないですが、この投げ方が一番、ストライクが入る」。思考だけでなく、フォームも自己流を強調した。

 次は、春の全道大会で優勝した札幌第一との代表決定戦となる。「強い相手なので、とにかく低めに集めることを意識したい」。春王者の激しいプレッシャーに負けじと、沈思黙考で挑む。【永野高輔】