<高校野球長野大会:佐久長聖10-3日本ウェルネス筑北>◇18日◇準々決勝◇松本市球場

 快進撃を続けた創部3年目の日本ウェルネス筑北(ちくほく)と名将中原英孝監督(73)の夏は、8強に終わった。V候補の佐久長聖から9安打3得点も8回コールド負け。「肝心なところでミスが出て、うちが勝つプランがなくなった」。老監督は苦笑いで振り返った。

 3つの村が合併した筑北村は人口5000人弱の典型的な過疎の村だ。村おこしのため誘致され、15年9月開校。隣町出身で母校・松商学園で22年間、長野日大で10年間指揮を執り、夏8度、センバツ3度の甲子園。長野県最多の甲子園14勝の中原監督も誘致した。

 「オール筑北村」のサポートで廃校や稼働率の低い施設やグラウンドなどを提供される。お礼として毎週木曜日は農作業や道路清掃などのボランティア活動をする。貴重な労働力は村の救世主となり、村人から農産物の差し入れが届く。部員たちも肉体労働で体を鍛え、地域貢献と社会勉強で精神的に成長する。

 監督を慕って県内から選手が集った。内藤友哉捕手(3年)の父は91年センバツで中原監督が率いた松商学園の準優勝時の一塁手。「一生懸命やれば、1番にはなれないかもしれないが普通にはなれるぞ」。中原節がゆとり世代の球児を揺り動かす。昨秋の県大会で佐久長聖を3-1で撃破して初優勝の快挙。過疎の村に出現した高校球児たちと入魂のノックバットをふるう名将。過疎の村から甲子園へ。あくなき挑戦は続く。【大上悟】