春夏連続の甲子園出場を目指す第1シード静岡が、常葉大橘を5-3で破り、16強入りを決めた。主将の黒岩陽介捕手(3年)が、4打数3安打2打点で打線をけん引。先発の鈴木翔也投手(3年)が10安打を浴びながら要所を締めて完投した。王者が難敵を退け、聖地に1歩近づいた。

 9回裏2死一、三塁のピンチ。静岡の鈴木翔が、相手6番を遊ゴロに仕留めると、三塁側の静高応援席から、この日一番の大歓声が上がった。夏休みに入り、生徒、保護者、OBを含めた多くの静高ファンがスタンドを埋める中で、接戦を制した。自分に厳しい黒岩主将も、満足げな表情で振り返った。

 「今日は良かったと思います。序盤からガンガン攻めていこうと思っていましたし、(鈴木)翔也もよく踏ん張ってくれました」

 1回表に先制するも、同裏に3失点で逆転された。だが、黒岩がすぐに嫌なムードを吹き飛ばした。2回表2死二、三塁。高めに浮いた変化球を捉え、右前に同点の2点適時打。流れを一気に引き戻した。

 その後も再三ピンチを迎えるも、鈴木翔が踏ん張った。6回裏2死満塁の場面では、1回裏に先頭打者本塁打を放った常葉大橘1番で右打者の紅林史也内野手(3年)から、外角低めの直球で見逃し三振を奪った。「あそこが勝負の分かれ目。黒岩を信じて、気力でベストボールを投げられました」。

 7回裏無死一、二塁の場面でも、県屈指の左強打者で4番の夏目大捕手(3年)から直球で見逃し三振を奪い、後続も抑えた。立ち上がりに鈴木翔の変化球が狙われていることを悟った黒岩が、直球主体の組み立てに変更。栗林俊輔監督(45)は「黒岩で勝ったようなもの」と、好リードと好打でチームを引っ張った主将を評価した。

 黒岩は、意識してきた走塁でも1盗塁を決めるなど、結果を残した。「今日は良かったですが、たとえダメな時でも、どんな形でも貢献していきたいです」。今日22日、飛龍との4回戦でも、その存在感を見せる決意だ。【鈴木正章】