「県立から甲子園へ」の夢はかなわなかった。相模原はセンバツ4強の東海大相模をあと1歩のところまで追い詰めた。

 ノーシードから快進撃を続けた相模原を支えたのはグラウンドにいる選手だけではない。スタンドで2年連続太鼓をたたく奥田雄太郎外野手(3年)もその1人だ。春の大会前に左手中指を骨折。復帰は絶望かと思われた。それでも「チームのために」と完治前にもかかわらずノッカーを買って出た。その様子が目にとまり、医者の許可が出た6月の練習試合でチャンスをもらった。だが、結果は出なかった。

 メンバー入りできなかった奥田に3年生から「応援の太鼓をやってくれ」と言われた。悔しい思いはあったが「これもチームのため」と思い引き受けた。母朋子さんは「できることをしっかり頑張ってほしい」と息子を励ました。4回戦の向上戦に勝利したあとベンチ入りのメンバーから「ありがとう」と声をかけられ人目もはばからず涙した。この日も平日にもかかわらずスタンドには大応援団。その声にも負けないくらいの大きな音を出し続けた。

 先輩に誘われ茅ケ崎市から1時間半かかる相模原を選んだ。毎日一生懸命通い練習したが、ベンチ入りはかなわなかった。それでもスタンドから太鼓でエールを届けることにやりがいを感じていた。奥田は「(メンバー外れてから)練習は見に行っていません。最後まで太鼓をやり切りたい」と語っていた。試合には負けたが、これからゆっくり仲間と会って、夏の思い出を語り合う。【松熊洋介】