今夏の甲子園大会で準優勝した金足農(秋田)の吉田輝星投手(3年)が、圧巻の投球で高校最後の公式戦を締めくくった。常葉大菊川(静岡)との2回戦に先発。5回4安打無失点で毎回の11個の三振を奪い、2回には自己最速を2キロ更新する152キロをマークした。日本高野連に提出するプロ志望届の提出期限が11日に迫っているが、進路については明言を避けた。

球場がどよめきと歓声に包まれた。2回1死。吉田はリリースの瞬間に力を込め、腕を振る。放たれた剛球は外角低めから伸び上がるように捕手菊地亮のミットを突き上げた。見逃し三振。152キロの球速表示に場内が沸き、吉田は不敵に笑った。「これは出たなと思った。最後の試合で出せてうれしい」。対戦した常葉大菊川の8番漢人は「まるでアニメ。低めだと思ったけど浮き上がってきた。打てる高校生はいない」とぼうぜんとした。

本来の投球から程遠かった9月のU18アジア選手権とは見違えるような投球を見せた。吉田は「疲れもしっかり抜けていた」とうれしそうに言った。だが、今後の進路については慎重な態度を崩さなかった。落ち着いた表情で「全くまだ考えてない。時間がなかったので、まだ話し合いもそんなにしていない。迷って決められないというよりも、時間がなかった」と白紙の状況と強調した。

U18アジア選手権が終わってから、吉田は金足農の中泉監督とじっくり話す時間をあまり取れていない。一方で、父正樹さんとは断続的に話し合っている。この日、観戦に訪れた正樹さんは吉田に判断材料を与えるような話をしたといい「例えばプロに入ればこうなる、進学ならこうなるといった具合に説明しました」と明かした。現時点でも正樹さんと中泉監督は今夏の秋田大会前から既定路線とみられていた八戸学院大(北東北、青森)への進学を希望する。それでも正樹さんは「自分が責任を持って決めた進路については尊重したい」と息子の決断を後押しする構えだ。

高校日本代表で一緒になった仲間たちは、剛腕の今後の進路について「相当迷っている」と受け止めている。吉田は毅然(きぜん)と「後悔しないような道を選びたい。両親としっかり話し合って(中泉)監督さんにも客観的な自分の能力を見てもらって、周りの意見を聞いて決めたい」と宣言した。限られた時間で熟考を続ける。【高橋洋平】