龍谷大平安(京都)が延長11回におよんだ息詰まる投手戦を制し、京都勢の春夏通算甲子園200勝を達成した。昨夏の同校の甲子園通算100勝に続くメモリアル星。エース野沢秀伍投手(3年)が11回を完封した。原田英彦監督(58)は「1つの区切りに名前が刻まれるのはうれしいですね」と笑顔だった。

決めたのは「華麗なる一族」の奥村真大内野手(2年)だった。0-0の延長11回、1死二塁で4番の水谷祥平外野手(3年)が敬遠された。

次打者席にいた奥村は「ずっと打てずに悔しかった。自分で勝負してくれるんだとうれしかった。(相手に)『ありがとう』という気持ちでした」とニヤリ。原田監督も「奥村はああいうシチュエーションが好きだから、打ちよるやろと思った。燃える男ですから」。

監督に「この回しかない。頼むぞ」と声を掛けられた奥村は、打席途中で左胸を3回、こぶしで強くたたいた。テンションが上がると出るという叫び声を上げ、球審に注意されたほど気合が入っていた。

直後、内角直球を強く振り抜いた打球は、高々と左翼フェンス手前に落ちた。「自分には直球で攻めてきていたので、直球1本で狙っていました。本塁打を打つという気持ちで打席に入ったので、ああいう打球になりました」。決勝の1点をつかみ、二塁塁上でガッツポーズした。

強くたたいた心臓。奥村は不整脈を患い、今年1月、心臓にカテーテルを入れる手術を受けていた。手術を受けなければセンバツ出場が危ぶまれた。不整脈が完治し、全力練習が可能になった。「今は自分でも分からないくらい」と爽快にバットを振れている。

奥村の兄はヤクルト展征内野手(23)。父は甲西(滋賀)の監督の伸一氏(50)。兄は日大山形、父は甲西の選手として甲子園で本塁打を放っており、真大が打てば史上初の「父子3人」での甲子園本塁打達成になるところ。あと数メートル届かなかったが、次戦以降で大記録に挑戦する。また、祖父の展三氏(74)は、甲賀(滋賀)の監督として甲子園に出場。文部科学副大臣などを歴任した元政治家だ。この日も観戦し、孫の雄姿を喜んだ。