“早実のサントス”がいた。今春からメンバー入りを果たした佐渡楓外野手(2年)は、5回に代走で出場。

6回無死一塁の第1打席で犠打を決めた後、6-2の8回先頭で第2打席が回ってきた。

佼成学園・石元の初球だった。左打ちの佐渡は、打席内で左足を前に進めながら打ちにいく姿勢を取った。いわゆる「走り打ち」。キューバ代表で17年にロッテでプレーしたロエル・サントス外野手(31)ばりの動きを見せた。

バットは振らず、2球続けて見逃しストライク。簡単に追い込まれてしまったが、3球目に真骨頂を見せた。空振り三振だったが、捕手がボールを捕れない。暴投だ。佐渡は走り打ちの姿勢から、そのまま本当に一塁へ走りだした。

ボールは大きくそれたわけではなく、捕手の左側、少し動いて手を伸ばせば届く位置に転がった。すぐに一塁へ送球されたが、佐渡の俊足が上。振り逃げを勝ち取った。ここから打線がつながり、この回一挙7得点でコールド勝ちにつなげた。ちなみに、この回だけで打者一巡、佐渡はイニング2度目の打席にも立った。今度は二ゴロだったが、極めて微妙なタイミング。やはり、走り打ちで勢いをつけて一塁へ駆けだし、あとちょっとで内野安打だった。

「走り打ち」は、和泉実監督(57)のアイデアだ。昨秋、U17東京代表のコーチとしてキューバ遠征に参加した。「向こうで練習を見たら、1番打者なんか、結構やってるんです。それで、佐渡にも『よさを出してみたら』と言いました。足が、すごくある子。打つことを含め、力を上げていかないと頭打ちなのは、本人も分かっている。今日『監督さん、やっていいですか?』と自分から聞いてきたので」と舞台裏を明かした。

振り逃げに「スタートを切れてましたからね」と和泉監督。もし、通常の打ち方なら一塁は間に合わなかったかもしれない。「初めてのことは面白い」と楽しそうだった。昨秋都大会はベスト4に終わり、センバツ出場を逃した。今夏への試金石とも言える春季大会で、気になる新戦力が現れた。【古川真弥】