群馬大会開幕戦で、渋川青翠の165センチ、62キロの小柄な左腕、宮下侑(あつむ)投手(3年)がアクシデントにもめげず、6安打1失点で完投勝利を飾った。

いきなりだった。1回裏の投球練習中、体に異変が生じた。「左のふくらはぎがつってしまって。序盤は苦しかったです」。開会式直後。2番打者として右前打を放った1回表には、三盗も決めていた。一昨年、昨年の夏も足がつった前歴がある。「足がつりやすいんです。しっかり水分補給したのですが…」。3回まで毎回得点圏に走者を背負う苦しい投球も、イニングの合間に仲間がマッサージをしてくれたおかげで回復。9回に1点を許したが、4回から8回までは圧巻の無安打投球だった。

群馬県では、名の知れた好投手だ。球速は130キロ台前半ながら、日本ハムの公文のようにインステップして右打者の内角をえぐる直球を武器にする。昨秋の県大会では創部初の4強進出の立役者になった。

高崎経大付とは今春の県大会初戦で1-2の逆転負け。6月の抽選会で再戦が決まったときは「逆にうれしかった。春のリベンジをしたかった」という。春以降はボールの回転数アップを目的に指先の強化に着手。重さ5キロのメディシンボールを指先でキャッチする練習を繰り返した。「指のかかりがよくなって、伸びが出てきた」と胸を張る。

見据えるのは県の横綱、前橋育英との対戦。中学3年時に入学の誘いがあったが「地元の公立校でやる」と渋川青翠に進んだ。両校が勝ち進めば20日の3回戦で激突する。小さなエースは「育英と戦って勝ちたい」と力を込めた。【片倉尚文】