桐生第一(群馬)の韋駄天(いだてん)、工藤ナイジェル内野手(3年)が圧倒的なスピードを見せつけた。「1番・二塁」で出場し、2点リードの2回1死二塁で迎えた第2打席。右中間を深々と破ると、50メートル5秒9の快足を生かして一気に三塁に達した。主将が放った適時三塁打を呼び水に、この回5得点。流れを呼び込み、初戦を手にした。

「初戦だし、『試合の入りが大事』とみんなに言っていた。いい形で1本出てよかったです」

ガーナ人を父に持つ工藤は抜群の身体能力を誇る。幼少時を過ごしたガーナではサッカーに熱中し、小学2年時に東京・江戸川区に移り住むと一転、野球少年に。トレーニングの一環として始めた縄跳びでも才能を発揮した。

中学2年時に「全日本なわとび選手権」中高生男子の部に出場すると、30秒スピード(二重跳び)で2位になるなどして、総合8位入賞。都合が合わずに辞退したが、世界選手権代表に選出された。他にも動体視力を養うためにボクシングにも挑戦。「いろいろなスポーツをやったことは今に生きている」と胸を張る。

最上級生になった昨秋に不動の1番になり、出塁率は5割超。今春からは主将の重責も担う。昨秋より指揮を執る今泉壮介監督(39)は「以前は自分の成績で気持ちも浮き沈みも激しかったが、今はチームのために献身的にやってくれている」と目を細める。

1999年夏に全国制覇を果たした強豪も、夏の甲子園出場は2008年が最後。復権の鍵を握る韋駄天主将は「行動でチームを引っ張って、必ず優勝する」と力を込めた。【片倉尚文】

◆工藤ナイジェル(くどう・ないじぇる)2001(平13)年9月27日生まれ、北海道・釧路市出身。幼少時に父の母国ガーナへ。小学2年で帰国し、小中を通じて東京江戸川ボーイズでプレー。桐生第一では1年秋からベンチ入り。弟ジョエルは桐生第一2年で野球部員(今大会はベンチ入りせず)。165センチ、65キロ。右投げ左打ち。