この春に頭髪を自由化した東農大二が5回コールドで大泉を破り、初戦を突破した。1点ビハインドの4回2死から、2四球を挟んで8者連続安打。一挙9点を奪って試合を決めた。

試合後、校歌を歌うベンチ入り20選手の中に、丸刈りの選手は1人もいなかった。今年3月。主将の小野沢光洋捕手(3年)ら選手が話し合って、頭髪自由化を坂上泰生監督(33)らに提案。首脳陣も提案に賛同した。

「おしゃれをしたいからではないんです。主体的に自分たちで考えて、各自が役割を果たしていくのが僕たちのスタイル。頭髪自由化はその象徴だと思います」と、さわやかな短髪スタイルの小野沢は説明した。

整髪料はNGとするなど自分たちでルールを作った上で、選手は自分の好きな髪形で野球に取り組む。もちろん、あえて丸刈りにする選手もいる。そこも、自由だ。 

春夏通算8度の甲子園出場を誇る実力校も、2009年の夏の大会を最後に聖地から遠ざかる。昨年秋の県大会で高崎商に3回戦で敗れた後、低迷打破を図ろうと、坂上監督はチーム改革に着手した。

まず「リーダー制」を敷いた。投手、捕手、内野、外野、打撃、走塁、トレーニングの7部門それぞれにリーダーを決めた。さらに、清掃など生活面も含めて13の委員会を設置し、ここでもそれぞれに責任者を決めた。部員数は群馬県で最多の112人(マネジャー9人を含む)。大所帯を機能させるための措置でもあった。

「選手に主体性を持たせるのが目的です。絶対に思考停止にならないようにと。最初は失敗もしたけど、ここにきてチームらしくなってきた」と坂上監督は目を細める。

日々の練習メニューは、小野沢が中心になって選手で決める。「責任は重いけど、決して苦ではない」と主将は言う。

自分たちで考え、実行する。慣習だった丸刈りを脱した大人の集団が、旋風を巻き起こしそうだ。