昨夏4強の盛岡市立が、タイブレークに突入した延長14回裏にサヨナラ勝ちした。盛岡中央に一時は7点差をつけられたが、9回裏に村田憲翔外野手(2年)の代打3点本塁打で同点。最後は吉田聖也内野手(3年)が右翼線に適時打を放って、3時間44分の熱戦に終止符を打った。エース右腕・四月朔日(わたぬき)隆徳(3年)も30度近い熱さの中で粘投。序盤に満塁本塁打を浴びて一時降板したが、8回から再登板すると14回無死満塁の危機で連続三振を奪い、劇的勝利につなげた。

   ◇   ◇   ◇

2年生の起死回生弾が、3年生の意地を引き出した。6-11で迎えた9回裏、2点を返し、なおも2死一、二塁。175センチ、63キロと細身の村田が代打で左打席に入ると、内角高め直球を思い切り振り抜いた。「ホームランなんて打ったこともなかったので、最初は打ち取られたと思った」。大きな弧を描いて右中間に弾んだ白球は見ていない。二塁ベース手前で二塁塁審が手をグルグル回す姿を見て「入ったんだと分かった」とガッツポーズ。本塁で仲間にもみくちゃにされたが「舞い上がっていて、記憶がないです」と苦笑い。興奮は試合後も続いていた。

エース四月朔日(わたぬき)も燃えた。自己最速141キロを記録したが、3回7失点で一時降板。8回から再びマウンドに上がり「後輩が打ってくれたのに、情けないままで最後の夏を終われない」。10回には3者連続三振。11回にも2奪三振。タイブレーク突入の13回は互いに1点ずつ取り合い決着つかなかったが、14回無死満塁の危機で「心は熱く、体は冷静に。直球は相手に合っていたので」とスライダーで連続三振。延長の全5回は無安打に封じた。サヨナラを決めた吉田聖とも歓喜と安堵(あんど)の涙を流しながら抱き合った。

四月朔日にとって、マリナーズで活躍する盛岡東リトルの先輩・菊池雄星(28)が大きな存在だ。甲子園で準優勝した花巻東での投球に憧れ、中3時には講演会で初対面。「握手した時の大きな手の感触は忘れられない。自分のことが海を越えて耳に入るくらい活躍したい」。まずは甲子園初出場を届けるつもりだ。

岩手の公立校甲子園出場は94年の盛岡四以降、遠ざかっている。「私立を倒したいと思って、家の近くの学校を選んだ。今日はチームメートに助けられたが、次からはみんなを助けたい」。今冬、長靴で雪の上を走り続けて下半身を鍛えてきた成果を、最後の夏に結実させる。【鎌田直秀】