日米13球団27人のスカウト関係者の視線をくぎ付けにした。大船渡(岩手)の佐々木朗希投手(3年)が、6回参考ながら無安打無得点投球で一戸を破り、16強入りを決めた。初戦の遠野緑峰戦からギアを1段上げ、最速は155キロ。相手打線から13個の三振を奪った。異例の地方大会視察となったソフトバンク三笠杉彦取締役GM(45)ら、球団幹部の姿も増えてきた“ロウキ劇場”。8強入りをかけた20日の4回戦では、盛岡四と対戦する。

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一戸打線のバットは93球で28度、空を切った。試合開始から4連続の空振り三振。1人挟んでまた三振で、終わってみれば6回13奪三振。佐々木が「少し多いかな」と振り返る球数は、三振の副産物だった。

バットには18球当たり、フェアグラウンドに飛んだのは5球。大半がファウルチップだった。4回1死での四球の瞬間、完全投球が途切れると、満員のスタンドからため息が漏れた。

最速は155キロ。2回2死から空振り三振を奪った1球と、4回に相手4番打者がファウルにした球。初戦の147キロから8キロもアップしたが、佐々木は「少し球速というか、ギアを上げました」と涼しい顔。6回無安打投球にも「四球から点を取られることも多い」と、フルカウントから歩かせた自分を戒めた。

大記録を予感させる球筋に、ネット裏の背広組の気合も高まる。早朝5時ちょうど、西武スカウトが花巻球場に到着。1分後にロッテ、ソフトバンク、中日のスカウトもやって来た。良席確保も大変だ。最終的に日米13球団27人に。東北新幹線・北上駅からタクシーで6000円以上かけて急行するスカウトもいた。

ソフトバンク三笠GMも訪れた。「素晴らしい。ぴゅっと投げて150キロ、それでもMAXじゃないとは」と衝撃を受けた様子。14年に編成首脳の任につき、高校野球は春夏の甲子園を視察してきた。地方大会の視察は「たぶん初めてですね」。異例の現地観戦を決意した163キロ右腕の1位指名公言には「迷いますね」とニヤリ。「ただ、今年は彼中心のドラフト。12球団全部1位指名でもおかしくない」と評価は最大級だ。

甲子園へあと4勝。舞台は盛岡へ移る。佐々木は周囲の盛り上がりを気にせず「どんどん強い相手が待っているので全力でいきたい」と力を込めた。本気の佐々木はここからだ。【金子真仁】