4年ぶり25度目の出場となる静岡高は、津田学園(三重)に1-3で敗れ、初戦で涙をのんだ。

2回に2点を先制され、3回にも追加点を挙げられる苦しい展開。それでも、4回から2番手で登板した松本蓮投手(2年)が、6イニングを無失点の好投。8回には、小岩和音(あのん)主将(3年)の適時打などで反撃。大正、昭和、平成、令和の4元号勝利とはならなかったが、伝統校の意地を見せ、充実感を胸に甲子園を去った。

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試合後、栗林俊輔監督(46)は「力負けです」とゲームを振り返った。序盤は、相手先発・前佑囲斗(まえ・ゆいと)投手(3年)の球威に苦戦。詰まらされて、凡打の山を築いた。先発の松下静(じょう)投手(3年)も3回までに3失点。3回の攻撃中に代打を送られた。「もっと甲子園のマウンドを楽しみたかったのですが、力不足でした」と肩を落とした。

だが、エースからバトンを受けた松本が、チームに勇気を与える投球を披露した。代わった最初の4回に「人生初」の3者連続奪三振。その後も、直球と変化球をバランス良く交えた投球で、相手打線に的を絞らせなかった。「初めての甲子園で投げる喜びを感じた。今日は、スライダーの出し入れがうまくいきました」と胸を張った。

昨秋から登板機会を得ていたが「3回持てば良いほうだった」という。今春以降は、スタミナ強化のために走り込みを徹底。その結果、酷暑の中でも集中力を維持。6回からは4イニング連続で得点圏に走者を背負ったが、無失点に切り抜けた。2年生左腕の力投に、指揮官も「負けたことは悔しいが、松本の投球は大きな収穫になった」と振り返った。

昨秋、今春と結果を残せず、チームはどん底状態にいた。そこに、新しい風を吹き込んだのが2年生だった。栗林監督が「2年生は物おじしない子たちが多い」と話す通り、積極的なプレーでチームに勢いを与えた。この日の8回には、2番神谷侑征内野手(2年)が初球を右前打。すかさず二盗し、4番小岩の適時打で本塁を踏んだ。

下級生に背中を押された3年生も実力を発揮。今夏の県大会決勝では、2年生がつくった好機を3年生が連打で得点に結びつけた。学年を問わず、1つとなったチームは、ノーシードから始まった夏を制し、聖地でも持てる力を出し切った。

今月後半からは、新チームとなって秋季大会に臨む。新エース候補の松本は「自分が中心になって引っ張っていきたい。来年は、甲子園で完封できるような力をつけて、ここへ戻ってきます」と力強く誓った。【河合萌彦】