45年ぶり5度目出場の秋田中央が0-1で立命館宇治(京都)に惜敗し、47年ぶり勝利はならなかった。

エース右腕・松平涼平(3年)が8回途中まで5安打7四死球を与えながらも要所で踏ん張り、1失点(自責0)の粘投。1年生捕手・野呂田漸らバックもエースをもり立てたが、7回無死満塁の先制機で無得点。相手左腕・高木要(3年)に3安打に抑えられ、最後までホームが遠かった。

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半ば放心状態だった。秋田中央のエース松平は、ベンチ前に整列しても涙を見せなかった。「負けた気がしないです」。通路のインタビュー台で、失点場面での球種などを聞かれても、「ちょっと冷静になれない。覚えていないです」と消え入るような声で答えた。甲子園の夢舞台で、完全に頭脳と体力を使い切っていた。

初回から制球が定まらなかった。先頭打者にいきなりストレートの四球。次打者の初球に二盗を狙った走者を、1年生捕手・野呂田漸が刺し、嫌なムードを断ち切ってくれた。4回裏1死二塁では、河野泰治右翼手(3年)が追いつきながらも落球し二塁打となったが、懸命に踏ん張った。6月の文化祭で「ミスター中央」に選ばれたイケメンエースは、秋田勢として昨夏旋風を起こした金足農・吉田輝星投手(18=日本ハム)ばりに、何度も何度も帽子を飛ばしながらの熱投を続けた。

7回の攻防が明暗を分けた。7回表無死満塁で、県大会チーム最高打率5割6分3厘の斉藤椋平外野手(3年)が投ゴロで、ヘッドスライディングした際に両足をつり負傷交代。結局1点も奪えなかった。その裏、1死二塁から二塁ゴロを佐々木夢叶内野手(3年)がトンネルし失点。それでも集中力を切らさなかった。「とにかく最少失点でいけば流れはくる」。2死三塁となり、強烈な打球が襲ったが、「はね返すと追加点になるので、絶対に捕ってやろうと思った」とエースの意地で2点目を防いだ。佐藤幸彦監督(45)は「前は7回で落ち込んでいたけど成長したと思います」と成長を感じ取った。

佐々木と同じ二塁で練習を積んできた三塁コーチの加賀谷三亜土(さあど、2年)は、「あれだけ練習してきた夢叶さんでもエラーをする。これから頑張って先輩を超えられるようなセカンドになりたい」と涙を流した。下級生は甲子園の怖さを糧に新チームをスタートさせる。松平は「この雰囲気を忘れないでほしい。全国には強いチームがいるんだと分かった状態で、練習してほしい」と、後輩たちに甲子園での勝利を託した。【野上伸悟】

▽秋田中央の奮闘を、神戸高のブラスバンド部69人が後押しした。秋田中央のブラスバンド部は9日からのコンクール出場のため甲子園に来られず。文部科学省が指定するスーパーサイエンススクールでつながりのある神戸高のブラスバンド部が友情応援した。応援に参加した幸泉舞さん(3年)は「甲子園で演奏するのが夢だったので楽しかったです」と笑顔を見せた。