ゲームセットを、明石商・中森俊介投手はベンチから見届けた。8回に代打を送られ、降板。「体力のなさを実感しました」。春夏連続であと2勝をつかめなかった現状を受け止めた。

立ち上がり、履正社につかまった。先頭・桃谷の三塁打から4失点。強力打線を警戒する中でボールが先行し、上半身に力が入った。甲子園8試合目で5失点も11被安打も、自己ワーストだった。

準々決勝の救援で甲子園の2年生歴代2位の151キロをたたき出し、八戸学院光星(青森)を倒した。その裏で、疲労以外の体調不良とも戦っていた。万全の状態は、かなわなかった。

「中森は連投に耐えうる肩のスタミナ、体力を身につけないと」。苦境も理解した上で、狭間善徳監督(55)は注文を出した。「たとえ160球でも200球でも、投げなあかんときは投げなあかんのです。全部員が同じ方向に向かって頑張っているんやから」。だからこそ強い体と心が必要なのだと。“狭間ガッツ”で鼓舞し続けた監督の説くエース道だった。

1回裏、来田が「中森が4点で止めてくれた。流れを取り戻そうと思って打ちました」と反撃の先頭打者弾。エースの背中に、仲間は応える。「先輩の分まで日本一を目指していきたい」。頂点への挑戦が、また始まる。【堀まどか】