第102回全国高校野球選手権大会(甲子園)中止にともなう代替大会が、岩手県から始まった。北奥地区予選の開幕戦は、水沢商が8-7で専大北上を振り切り、夏は3年ぶりの初戦突破を決めた。

「4番投手」千田大輔(3年)が、打っては初回に同点右前適時打。投げても右太もも裏けいれんで一時マウンドを降りたが、9回に1点差に迫られると再登板し、試合を締めた。次戦は3日に金ケ崎との代表決定戦に臨む。水沢、宮古、宮古商工は県大会出場を決めた。

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水沢商エース右腕・千田大が、最後の力を振り絞った。強い雨の降る中、149球目。仲間が一飛を丁寧にキャッチするのを確認すると、両拳を握ってガッツポーズ。1、2年時も主力を務めたが、初戦敗退だったため初の校歌斉唱。コロナ禍の影響で20人が少し距離をとって横に並び、小さな声で歌った。「絶対に勝つぞという気持ちでやっていたので、素直にうれしい。先輩たちや支えてくれた人たちのぶんも背負って投げました」。甲子園の夢は消えても、校歌の味わいは格別だった。

安打と仲間の失策で1点を先制されたが、自身のバットで同点にし、チームに自信を取り戻させた。2回には犠打を挟んで5連打で打者一巡の一挙5得点。強豪相手に7回表を無失点に封じればコールド勝ちだったが、2失点に苦笑い。「9回やるつもりだったので気にはしなかった」と冷静だったが、8回途中に右太もも裏を痛めて、9回からは二塁へ。だが、相手の3ランで1点差に迫られると、再びマウンドへ。最初の打者を空振り三振に切ると、磨いてきたカットボールやチェンジアップを交えて後続2人も封じた。

練習自粛期間中、3年生を中心に目標を再確認した。「野球を楽しもう」で一致団結。ミスした後にどう行動するのかをテーマに、笑顔で励まし合い、好プレーを導き出す。大会前の練習試合では昨秋4強の盛岡商にも勝ち、手応えを得ていた。

投打の軸は「自分たちがやることをやれば勝てると思っていた」と胸を張る。強敵相手にも名前負けはしない。県頂点へ、まだまだ野球の楽しさを満喫する。【鎌田直秀】

〇水沢商主将の小沢優斗内野手(3年)が3安打2打点で、夏の3年ぶり勝利を導いた。初回に自身の2失策で失点、9回から登板して3ランも浴びたが、打で挽回。初回先頭の左前打から同点ホームを踏むと、2回には中前2点適時打で一挙5得点に貢献した。入学後初の校歌にも「力のある私学に勝てたことがうれしい。県頂点を目標に、何回も味わいたい」と余韻を楽しんだ。