流した涙とともに、結束が深まった。福島県の高校野球独自大会で14連覇に挑む聖光学院が11日、桑折町内の同校グラウンドで夏本番前恒例の壮行試合を行った。第1試合は3年生の控え組メンバーを中心に7イニング制を戦い、劇的なサヨナラ劇で決着。3年間苦楽をともにした仲間との絆を再確認し、18日開幕の本番に向けてまとまった(学年はすべて3年)。

回を追うごとに、聖光ナインの目から涙があふれた。7回表2死一塁。マネジャー兼任の鈴木遥介内野手が涙で打席に向かった。「最後の打席だと思って、こみ上げて来るモノがありました」。斎藤智也監督(57)から「泣いていたらボールが見えない。泣き終わらせろ!」のゲキに、主将の内山連希内野手が伝令で言葉をかけた。「遥介は選手なのに、自分たちを支えてくれている。『最後は思い切っていけ』と。打席に立つのを見て自分も泣いてしまった」。鈴木も高校最後の打席で悔いなく振り切り、「仲間の思いをバットに乗せられた」と、2ストライクと追い込まれながらも中前打を放った。

劇的だった。同点の7回裏1死一塁では、4月の練習中に鼻を骨折し、前日10日に退院したばかりの須藤渉太内野手がつないだ。マウンドの数メートル手前からゆっくり投じた渡嘉敷乾投手の1球を、犠打で転がした。ベンチに戻ると仲間と笑顔でハイタッチ。そして2死一、二塁から、浅川椋捕手が左前へのサヨナラ打。3年生たちのボルテージは最高潮に達し、涙ながらに抱き合った。

涙の数だけ強くなる-。

斎藤監督 最後にチームが1つになる試合。レギュラー以上の大仕事をするシーンもあった。遥介は自分を犠牲にして、人のためにサポートする気持ちが強い子。だから、泣きながら2ストライクまでかすりもしなかったのに、打っちゃうんだよ。野球は理屈では語れない、スポーツなんだろうね。

甲子園にはつながらなくても、V14に向かって、3年生34人が1つに結ばれた。【佐藤究】

○…午後に行われた第2試合は、主力組が2年生チームに4-5で敗れた。エース右腕の舘池亮祐(3年)が3回まで完全投球も6回に2失点。2点リードの最終回に四球と3安打で同点に追いつかれ、延長11回に逆転された。打線も7安打で4得点に終わり、斎藤監督は「チームを背負って戦うことに関して、本当の怖さだったり、プレッシャーがまだ足りないのかな」と奮起を促した。