元楽天イーグルスの枡田慎太郎氏(33)がコーチを務める仙台一が34年ぶりの「夏4強」を決めた。昨秋の県準々決勝で逆転負けした古川工に5-3で雪辱。5回から救援したエース右腕・奥山虎太郎(3年)が交代直後に2失点したが、6回以降は2安打無失点に抑え、昨秋敗れた相手に借りを返した。準決勝は午前10時から、石巻市民球場で2試合行われる。

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2点リードの9回表2死一塁、最終打者を中飛に仕留めた奥山は右手を突き上げてガッツポーズ。本塁上では武藤有雅捕手(3年)と森拓真主将(3年)がハイタッチで喜び合った。奥村は「(救援した5回の)立ち上がりにミスが絡んでずるずると失点してしまったけれど、変化球を低めに集めて立て直せた」と6回以降はエースの務めを果たした。

「9・19を忘れない」を合言葉に「第1目標」をクリアした。古川工と対戦した昨秋の県準々決勝は、8回裏まで2点リードも9回表に同点にされ、1死二塁で奥山が救援。2死二塁から相手エースに左前テキサス安打を許して逆転負けした。13年ぶりの秋4強と21世紀枠推薦の夢も断たれた選手たちは悔しさを胸に、「打倒、古川工」を第1目標に掲げて練習を重ねてきた。

先発の篠村大翔(3年)も4安打1失点。同じ投手リレーで借りを返した。打線もミラクルぶりを発揮。2死一、三塁から相手捕手の二塁けん制悪送球で先制し、2点を追う6回裏は3者連続安打に敵失を絡めて逆転した。

スタンドでは6月から指導する元楽天の枡田コーチが見守った。両チームとも失策が多い試合内容に、「勝たしてもらった、しょぼい試合でした」と厳しく指摘する。それでも「勝ちたい気持ちを強く持つことが大事」と、精神面での成長は感じ取っていた。56年ぶりとなる「夏の決勝」をかけ、絶対王者の仙台育英と戦う。25日に登米に勝利し8強を決めたとき、枡田コーチは「(仙台)育英が勝って当たり前とは思ってほしくない。いつも通りやれば良い試合はできる」と口にした。その時が、ついに来た。【佐々木雄高】

▽古川工・小野恋葵(れんあ)主将(3年=チームは相手を4本上回る計9安打も4失策)「ミスで流れを持って行かれた。でも3年間やってきたことは無駄ではない。今後の人生に生かしたい」