全国一番乗りで今夏の高校野球独自大会を制した専大北上(岩手)が、東北の頂点にも立った。先発した平沢大斗内野手(3年)が6回1安打無失点で試合を作り、エース右腕・伊藤星真(3年)も3回無失点の完封リレーで有終の美を飾った。チームの2枚看板が大一番でも本領を発揮。「特別な夏」に向けて、沢田悠主将ら3年生4人が中心となり、練習を通じて結束力を高めてきた成果を最後の公式戦で披露した。

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ダブルエースの2安打完封リレーで、専大北上が真夏の東北王者に輝いた。先発平沢は力のある直球とキレのあるスライダーを軸に1安打投球。0-0の2回無死二塁では2者連続三振。続く打者に安打を許すも後続を三振に抑え、この回3三振で先制点は許さなかった。「ピンチの場面でギアを上げた。コースにしっかり投げられた」。7回からは背番号1の伊藤が救援し、3回1安打無失点。最後の打者を三振に封じて、マウンド上で平沢と抱き合った。

ともにライバルであり、頼れる存在だ。前日11日の準決勝・五所川原第一(青森)戦では伊藤が1失点完投。平沢は「刺激になりました。お互いに切磋琢磨(せっさたくま)してきたので」。日々の練習から意識する仲間で、冬場の過酷なウエートトレーニングも一緒に乗り越えてきた。試合前には菅野裕二監督(46)から「決勝戦は2人で投げてもらう」と伝えられ、2人はグータッチで士気を高めた。平沢は「伊藤に0でつなぐ気持ちだったので、力まなかった」。昨秋からタスキを渡し合ってきたコンビの絆は深く、最後の一戦でも完璧につなぎ合った。

コロナ禍の影響で全国大会がなくなり、沢田主将がチームを奮起させた。2、3年生のLINEグループを活用し「東北大会で優勝して、全国に専大北上の名前を広めよう」を合言葉に、チームを1つにまとめた。今大会は先発起用が少なく、プレーで引っ張ることはできなかったが、人一倍大きな声で存在感を出した。菅野監督は「MVPは沢田ですよ。一番の功労者。スタメンではなかったけれど、声と行動でチームを引っ張ってくれた」と褒めた。

豊富な実戦経験も実を結んだ。4月から県内の強豪社会人チームと練習試合を繰り返した。ゴールデンウイーク期間は自粛するも、今大会までに42試合を戦い、実戦感覚を養った。選手の得た自信は大きく、菅野監督は「怒ってばっかりの3年生だった。最後に笑顔が見られて幸せです。同時に全国に立たせてやりたかったな。悔しいです」と複雑な胸の内を明かした。全国大会にはつながらなくても、「特別な夏」をやり切った足跡を残した。【佐藤究】