県高校野球界屈指の長距離砲として注目された加茂暁星の荒木友斗内野手(3年)がプロ志望高校生合同練習会(9月5、6日、東京ドーム)に県からただ1人参加する。高校通算30本塁打の長打力と優れた運動能力があり、複数のNPB球団が注目している。今回はほぼ経験がない捕手であえてエントリーし、その潜在能力の高さをアピールする。

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プロテクターとヘルメットで身を固め、マスクを取って野手陣に声をかける。荒木は、部活を引退してから初めて整えた捕手の装備を楽しんでいる。「自分にとって大きな勝負」。そう位置づけた合同練習会に向けて、連日、後輩たちと同じ練習メニューをこなす。練習会のために購入した木製バットの感覚を養う打撃練習に加え、捕手の動きも急ピッチで体に染み込ませている。

16日にプロ志望届を提出し、練習会への参加を決めた。決め手はNPBの複数球団から視察を受けていたことだった。「見てくれていたのならチャレンジしようと思った」。その中には捕手としての可能性を期待する声もあった。本職は内野手だが、岡村和部長(52)ら指導陣と相談し、捕手でのエントリーを決めた。

捕手経験は、分田イーグルスに所属していた安野小6年のときだけ。もっとも、岡村部長は「いきなりやらせても違和感はない」と評価。「投手をやらせれば140キロは出せた」(岡村部長)という遠投100メートルの強肩に加え、三塁、遊撃を守った俊敏性もある。将来性を重視するプロのスカウトに潜在能力を訴える作戦だ。

打撃には自信がある。高校通算30本塁打。強打が売りの加茂暁星で1年時から中軸を務めた。「金属と違って、速く、強く振らなければ」と木製バットの特徴に当初は戸惑ったが、今は「自分のスイングができてきた」と手応えをつかんだ。

プロ入りの機会は今回が最後と決めている。大学、社会人、独立リーグは目指さず、ドラフト会議で指名がなければ、本格的な野球からは離れる。「最初で最後のチャンス。楽しんで出し切りたい」と荒木は力強く語った。【斎藤慎一郎】

◆荒木友斗(あらき・ゆうと)2003年(平15)1月18日生まれ、阿賀野市出身。安野小1年のときに分田イーグルスで野球を始める。水原中では少年硬式野球NGM(新津・五泉・村松)に所属。3年のときに日本リトルシニア選手権に出場。加茂暁星では1年の春からベンチ入り。176センチ、86キロ。右投げ右打ち。

◆プロ志望高校生合同練習会 日本高野連と日本野球機構(NPB)が主催。新型コロナウイルスの影響で春のセンバツ、夏の甲子園と地方予選が中止になったことを受け、高校3年生のアピールの場として開催される。プロ志望届の提出が参加条件。東日本会場(9月5、6日、東京ドーム)には41人、西日本会場(8月29、30日、甲子園球場)には77人がエントリー。視察にはNPB、大学、社会人、独立リーグの関係者が訪れる。