氷都八戸に春一番が吹いた! 日本高野連は29日、リモートで選考委員会を開き、第93回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)に出場する32校を選出。東北勢では21世紀枠で、昨秋東北大会8強の八戸西(青森)が春夏通じて初の甲子園出場を決めた。

東日本の同枠候補5校から最も高い支持を集め、県勢としても同枠初選出となり、公立校では85年の弘前工以来、36年ぶりのセンバツ切符をつかんだ。一般枠では、東北Vの仙台育英(宮城)が2年連続14度目、同準Vの柴田(宮城)も春夏通じて初出場を決めた。組み合わせ抽選会は2月23日にオンラインで行われる。

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雪に覆われた八戸西に、一足早く「春」が訪れた。午後3時33分、校長室に電話が鳴り響く。センバツ出場決定の吉報だ。会議室で待機していたナインは、渡辺学校長(58)から伝えられると表情を崩し、制服姿で喜びを爆発させた。宮崎一綺(かつき)主将(2年)は「今まで頑張ってきて良かった。こみ上げるものがあった」とかみしめた。

昨秋は東北大会8強入り。189センチのエース右腕・福島蓮(2年)が地区予選から全9試合に登板し、5完投(1完封)の大車輪として活躍した。「ずっとソワソワしていた。選ばれてホッとしている」。今冬のテーマは「球速アップと体重増」。新雪のグラウンドを走り込み、ウエートトレーニングに励んだ。72キロと細身なため、練習後はマネジャーの作るおにぎりを補食するなど、肉体改造に力を入れた。「秋から少しずつ大きくなっている」と手応えを感じる。

チーム始動日の3日に毎年恒例の書き初めを行った。宮崎主将は「役割」と記し、「主将としての役割。打席での役割など、いろんな意味を込めて」と説明。グラブにも「役割」を刺しゅうするほど、一番大事にする言葉だ。昨秋公式戦は21打数9安打で打率4割2分9厘。チーム最多タイの6犠打を決めるなど、下位打線に座る主将は上位打線への「つなぎ役」を果たした。

待ち焦がれた夢舞台。昨年12月11日に東北地区の21世紀枠候補に選出されてから、宮崎主将は「ユーチューブで甲子園の試合動画を見る機会が増えた。少しでも雰囲気を味わいたくて」。サヨナラシーンや名場面集などで、気持ちは高まる一方だった。「甲子園に行くのは人生初。行くだけじゃなくて、勝って校歌を歌いたい」。春の聖地で“名シーン”の主役となる。【佐藤究】

◆八戸西 1975年(昭50)創立の県立進学校。普通科と01年に新設されたスポーツ科学科がある。野球部も75年創部。部員43人。春夏通じて甲子園初出場。主なOBに元日本ハムの中村渉投手、駒大でエースだった竹本祐瑛投手(4年)、Bリーグ金沢の下山貴裕、ラグビー・トップリーグ東芝の佐々木剛。所在地は八戸市大字尻内町字中根市14

◆21世紀枠 01年から導入。推薦校は原則として秋季都道府県大会のベスト16以上(加盟129校以上はベスト32以上)から選ぶ。練習環境のハンディ克服、地域への貢献など野球の実力以外の要素も選考条件に加える。07年まで2校、08年から3校を選出(85回記念大会の13年は4校)。今回は明治神宮大会中止に伴い神宮大会枠がないため、21世紀枠を増やして4校とした。