ライオン軍団が“一戦全集中”で東北勢悲願の大旗取りに挑む。第93回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)に2年連続14度目の出場を決めた仙台育英(宮城)は昨秋、4戦37得点3失点の圧倒的強さで東北連覇を飾り、センバツでも優勝候補にも挙がる。人気アニメ「鬼滅の刃」に登場する鬼殺隊9人柱のように、投打の好選手がそろう。今日4日から連載「ナインの獅子柱」と題し、チームのキーマン9人を紹介する。第1回は「投柱」の伊藤樹投手(2年)。最速147キロ直球に6種類の変化球を操るエース格筆頭は、今冬の鍛錬で一回りスケールアップ。校章に描かれるライオンのごとく、本番に向けて牙を磨いている。

仙台育英の「投柱」、伊藤が自身3度目の甲子園マウンドへ手応えを口にした。「状態は上がっている」。今冬のテーマは「昨秋からの練習を継続する」だ。ウエートトレーニング中心のメニューで汗を流し、スクワット、デッドリフトは最大140キロを上げる。投手に必要な下半身を徹底的に鍛えた。「足を上げてから着地時までの安定感が増した」。一回り成長したエース候補はまず背番号1をつかみ、春の聖地に臨むつもりだ。

昨秋は背番号1で県大会、東北大会を制す原動力になった。持ち球の変化球は多投せず、直球主体の組み立て。4試合に登板し2完投(1完封)で4失点、防御率は1・44。「平均球速が上がった。真っすぐで空振りが取れるようになった」と自信を深めた。

ピッチングのお手本がいる。「鬼滅の刃」に登場する惚れっぽい「恋柱」甘露寺蜜璃のように、日本ハム金子弌大投手(37)の投球術に“胸キュン”だ。「金子さんのような意識で投げたい。全球種をストレートに見せることができれば、打たれにくい」と理想像に挙げる。最速147キロ直球に決め球のスプリットなど、6種類の変化球を駆使する。「三振を奪うのではなく、打たせて取るタイプ」。本家のように変幻自在な投球が持ち味だ。

1年の夏に甲子園デビューを果たし、2年夏も甲子園交流試合での倉敷商(岡山)戦に登板。それでも「甲子園で勝ち星がない。個人的にまずは1勝。初戦を大事にしていく」と気持ちを引き締めた。東北勢悲願の日本一に向けて、「投柱」が快刀(投)を振るう。【佐藤究】

◆伊藤樹(いとう・たつき)2003年(平15)8月24日生まれ、秋田・美郷町出身。小2から仙南東小(現仙南小)スポーツ少年団で野球を始め、秀光中教校(宮城)軟式野球部では中3時に全国中学総体準優勝。178センチ、78キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄、祖母。血液型O。