センバツ準優勝と健闘した明豊(大分)を率いる川崎絢平監督(39)の恩師である智弁和歌山・高嶋仁名誉監督(74)が1日、甲子園で決勝を観戦し、教え子の奮闘をたたえた。サヨナラでの惜敗だったが、意地の戦いぶりを評価した。

「勝ちそうな雰囲気だったね。一進一退で、どっちに転んでもおかしくないゲームだった。どこで1本出るか。押しながら、もう1本が出なかった。出とったら勝ってましたけどね」

競り負けたが、十分に強さを見せた。「驚いたのは僕より落ち着いてやっとるな。守りをしっかりしてます。内野手なので、育て方がうまい。チームがきちっと守ってきたので、僅少の得点差でも勝ち上がってこられた。やっぱり守りの成果だと思います。これにもう少し、打力が加わったら優勝できる」。センバツで5試合連続無失策。頂点こそ逃したが堅守が光った。

高嶋氏は、川崎監督にとって人生の師だ。社会人野球の和歌山箕島球友会での現役引退後、08年に母校・智弁和歌山のコーチに勧誘し、川崎監督が高校野球指導者の道に進むキッカケになった。決戦前の3月31日に電話で話した。「やることをやるだけです」。そう覚悟を伝えられると、1つだけアドバイスした。「優勝するのはちょっと早い」。師はそう明かして笑った。

明豊は3投手の継投で勝ち上がってきた。智弁和歌山の伝統さながらだ。高嶋氏は「智弁の野球。ちゃんと守っています。智弁和歌山は1人で500球投げる投手は入ってこない。ようけ用意して戦って優勝しています。彼も見とる。球数をあまり頭のなかに入れずに戦えた。思い切りできたんじゃないか」と評した。

高嶋氏は教え子の決勝での采配を「普段通り。バントをキチッと決める。(投手を)スパッと代えて。よう選手を見て動かしとる」と目を細めた。「彼自身、ガミガミ怒るようなタイプじゃない。行動で引っ張っていくところがあります。選手がついて行ったと思います。今度出てきたら優勝でしょう。これから九州の高校野球を引っ張るんじゃないですか」。甲子園を3度制覇して最多の通算68勝を誇る名将から川崎監督に、最大級の賛辞を贈った。【酒井俊作】