本物の強さを身につけた寅(とら)になる! 昨夏の福島県独自大会で14連覇を達成、東北大会との2冠に輝いた聖光学院には、頼もしくなった主将がいる。1年秋からレギュラーで活躍する坂本寅泰(ともやす)外野手(3年)だ。昨秋は県大会2回戦で敗退。悔しさを胸に、今冬はバットを振り込み、春先の練習試合から本塁打を量産中。最終的な目標にプロ野球選手を掲げた。

寅泰がラストシーズンに向けて、トラのように目をぎらつかせた。「自分たちの代で甲子園に出場して、東北勢初の日本一をつかむ」と堂々と言い放った。

主将になって約2カ月。坂本自身、大きく成長するきっかけになった。

「チームのことを考えるようになった。どうすれば、負けないチームになるのか。主将としてのプライドが出てきた」

小、中学校と主将経験はなかった。慣れない位置に最初は戸惑った。前主将で東洋大の内山連希マネジャー(1年)に電話で相談。金言をもらった。「じゃんけんには、グーとチョキ、パーがあるように、チームにも個性の違う選手がいる。例えば、チームにチョキの選手しかいなかったら、相手がグーのチームだったら絶対に負ける。自分の理想はみんなが真面目になることだと思っていたけど、それは違うと感じた。いろいろなキャラがいるからこそ、毎年違うチームができ上がる。夏を戦えるチーム作りをしていく」

昨夏の福島県独自大会、東北大会で下級生で唯一のベンチ入りを果たし、不動の3番打者として活躍。コロナ禍で甲子園は幻に消えたが東北勢初の“夏無敗”で締めくくった。「夏を経験しているからこそ、自分が主将になって、チームに新しい風を吹かせたい」と自覚を口にする。斉藤智也監督(57)も「チームに対して気を使って、遠慮気味だったけど、聖光学院の顔になってきたんじゃないか」と目を細めた。

一冬を越えて、スケールアップした。今冬は、木製バットを1日1000スイングを目標に振り込んだ。ウエートトレーニングで、肉体強化にも励み、春先の練習試合から10本塁打を量産。高校通算37本塁打のスラッガーは、「冬にしてきた成果を出せている」。

24日からは、春季県大会地区予選が2年ぶりに開幕。チームは25日に福島との初戦を迎える。「しっかり優勝を目指して、戦っていきたい」と力を込めた。

目標にはプロ野球選手を掲げる。高卒、大卒どちらで挑戦するかは現時点では断言しないが、今後の結果次第では高卒も視野に入れていく。「まだ(プロへの)手応えは感じられていない。自分は体格が細いので、プロに行くのは、まだ早いと思っている。でも、プロを意識していても、やることは変わらない。自分の技術であったり、野球に対する考え方を磨く」。

夏の福島大会では、前人未到の15連覇がかかる。寅泰は、チームを1つに束ねながら、自らの牙を研ぎ続ける。【佐藤究】

◆坂本寅泰(さかもと・ともやす)2003年(平15)5月26日生まれ、福島・いわき市出身。小3から中山スポーツ少年団でソフトボールを始め、平三中時代は軟式野球部に所属。いわき松風クラブでもプレーした。聖光学院では1年秋からベンチ入り。183センチ、76キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄。好きなプロ野球選手はエンゼルス大谷翔平。