第103回全国高校野球選手権(甲子園)出場を懸けた県大会が、東北各県で2年ぶりに開幕する。日刊スポーツ東北版では「白球にかける夏 2021」と題し、各県の注目校や選手を紹介します。第1回は7月7日に開幕する福島編です。小名浜海星は今春、13年センバツに出場したいわき海星と小名浜が統合して開校。統合後初の夏は10日、初戦(2回戦)で安積黎明と白河の勝者と激突する。下手投げ右腕・田中奨悟主将(3年)を中心に、一戦必勝で勝ち上がる。

小名浜海星が“夏初勝利”で新たな歴史を刻む。少子化による生徒数減少で学校統合は全国的に増加し、小名浜といわき海星は4月に統合。現校名に生まれ変わった。

現在は、本校舎で前小名浜、水産校舎で前いわき海星が勉学に励んでおり、野球部は太平洋真横のグラウンドで練習している。若林亨監督(54、前いわき海星)は「学校名が変わってプレッシャーを感じることがあっても、自分たちの戦い方を大事にしてほしい」と選手たちに望んだ。

東日本大震災から10年の年に、現校名初の聖地を目指す。いわき海星は11年、校舎が津波にのみ込まれ、グラウンドにはがれきなどが散乱。道具類も流された。それでも練習環境が整わない中、12年秋には2年連続での県16強入りなどが評価され、21世紀枠で13年春のセンバツに春夏通じて初出場。遠軽(北海道)との「21世紀枠対決」で1回戦敗退したが、当時小学生の田中は「甲子園に行ったことの印象が強くて、甲子園に行った高校でやりたいなと思った」と夢をもらった。

下手投げで“8色の変化球”を駆使する。2種類のスライダーやシンカーなど、8球種を用いた投球が武器だ。同じ下手投げの楽天牧田和久投手(36)らプロ選手の投球映像を参考に、投げ方や握りを研究。「下半身の使い方や右足の股関節に重心をかけることも学んだ」と、投球にさらなる磨きをかけた。

同校は福島県唯一の水産高校。若林監督は「走らせることが目的」と、冬季は学校から目と鼻の先にある砂浜で、サッカーやサーキットトレーニングで筋持久力、下半身の強化を図っている。田中も「球速は約10キロくらい上がった」と効果を実感する。また、海洋工学科で勉強する田中ら3年生3人は、2年秋に約1カ月半の遠洋実習でマグロ漁に参加した。同期間は揺れる船の中で、仲間と素振りや筋力トレーニングで努力を続けてきた。

チームの目標は「甲子園で1勝」だ。昨夏の選手権はコロナ禍で中止になったが、開催された県独自大会で県16強入りした。「先輩たちは甲子園で1勝することができなかったので、先輩たちの分まで頑張りたい」。福島には夏の県大会14連覇中で、今春も制した聖光学院が君臨する。互いに勝ち上がれば、準決勝で対戦する。「緩急を使ったピッチングで自分たちのペースで守って、打線は次につなぐ意識で戦いたい」。1歩ずつ着実に。まずは初戦を突破する。【相沢孔志】