弱気の虫を克服した男が、壮絶な点の取り合いを制した。

7-7の8回2死二塁、城北・南江陽輔投手(3年)が左中間へ勝ち越しの適時三塁打を放った。「ヒーローになりたい。ジコチュウで行こうと思いました」と照れながら明かした。

1点リードの直前7回に3番手で登板したが、先頭への四球から同点を許していた。点を取られた責任は一時保留して、バットで取り返した。門田元監督(32)は「もともと、気持ちが弱いところがあったのですが、夏になって気持ちを出せるようになりました」と目を細めた。

中等部に新型コロナウイルス陽性者が出たため、高校も休校が続いていた。学校が再開し、チーム練習が出来るようになったのは、わずか3日前。個々で練習を重ねていたとはいえ、試合勘などには当然、不安が残った。そこで、門多監督は「終盤になったら試合勘は戻る」と鼓舞。言葉どおり、5回まではリードを許しながらも、終盤にかけて得点を重ね、ひっくり返した。

南江は最後は本職で決めた。9-7の9回、1死からの連続死球などで1点を失い、なお2死一、三塁。相手打者を外の変化球で追い込むと「最後は三振を取ってやろう」と、強気に内角直球で空振り三振。激闘の決着をつけた。「心の強さを出して、向かっていく気持ちでやりました」と誇らしげだった。