<高校野球西東京大会:福生3-2武蔵>◇19日◇3回戦◇ネッツ多摩昭島スタジアム

都立高に現れた無名の大型右腕が快進撃を続ける。福生(ふっさ=西東京)の「4番でエース」伊藤寛人投手(3年)だ。186センチの長身から140キロ超えの速球を投げ、19日の3回戦(武蔵)では延長10回で13三振を奪った。被安打2本。2失点はともに押し出しだった。通算22イニングを投げて25三振を奪い、15与四死球も記録した。未完の右腕が西東京に波乱を起こすか。4回戦(22日)では早実に挑みかかる。

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同点で迎えた9回裏だった。伊藤が連続四球を与え無死一、二塁とサヨナラのピンチを迎える。次打者の送りバントは捕球した三塁手がしりもちをつき、一塁に投げられない。満塁となった次の瞬間、伊藤が三塁カバーに入り、オーバーランした走者を刺した。「守備にミスが出たとき、カバーするのがバッテリーなんで」。自らの9与四球は忘れてこう話した。

ここから5者連続して凡打に仕留める。10回の攻撃では自ら三塁打して決勝のホームを踏んだ。猛暑の中で175球を投げた。1回いきなり4四球を与え、1点を失う苦しいスタート。4回にも再び押し出しで1点を追加された。「7、8割で抑えていこうと思ったら四球になって。低めに投げようとしたんですが」。

それでも被安打は2本だけ。13三振を奪った。ストレートとカーブ、スライダーを投げた。「今日は140キロ出てない。ツーシームとスプリットは使いませんでした」と投球を振り返った。

永島良幸監督(53)は伊藤の投球をこう評価した。「押し出しは想定内。暑いんでスタミナ切れが怖かった。途中、打たれないからコーナーを狙う必要ないと話したんです」。福生には15年以来の4回戦進出となった。

次の相手は強敵早実だ。永島監督は「伊藤だったら勝機はある。あのポテンシャルはプロに入ってもおかしくないですから」。そう言われた伊藤は「強豪なんで、1つ1つアウトを取っていくことが大事だと思います」。9回裏のピンチと同様、冷静に次戦を見据えた。【米谷輝昭】