<高校野球石川大会:金沢10-9日本航空石川>◇24日◇準決勝◇石川県立野球場

涙の同点打だった。“加賀のドカベン”こと日本航空石川の内藤鵬(ほう)内野手(2年)が、起死回生の一撃を放った。5点を追う9回に4点を奪い、1点差に迫った。なお1死一、三塁。「自分まで回してくれてありがとう…」。打席前に、涙がこぼれた。3番を任されながら、4打席凡退で迷惑をかけた。思いをバットに乗せ、8-8同点の一打を左前に運んだ。

続く4番石井幸希外野手(3年)が勝ち越し打を放ち、この回6得点で9-8と大逆転。だがその裏、再逆転を許して壮絶な打撃戦に敗れ、昨夏の県独自大会王者は4強で姿を消した。

右のスラッガーの内藤は日本ハム中田に憧れ、体格は身長180センチ、100キロのドカベン級。春の石川大会では5本塁打をマークした。そして今夏も2発。星稜・松井秀喜(元巨人、ヤンキース)が2年夏までに放った県内公式戦8本塁打にあと1本と迫っていた。周囲の期待も高く「よっしゃやったろう!」と気合十分だったが、夢はかなわなかった。

まだ2年生。中村隆監督(37)は試合終了後のミーティングで、内藤の名を呼んだ。「今後はプレー以外のところも中心としてやっていかなければならない存在」と新リーダーとしても期待。「飛距離も率も残せ、将来プロを目指せる選手」とさらなる進化を求めた。内藤も覚悟を新たにした。「今と一緒の気持ちを味わいたくない」。あこがれの甲子園を目指し、悔しさをぶつける秋になる。【岡崎空日南太】