王者の威信を取り戻した。聖光学院が昨秋県王者の東日本国際大昌平に3-1で競り勝ち、秋は優勝した18年以来3年ぶりの頂点に立った。1-1の8回2死二、三塁。「6番右翼」で先発出場した三好元気外野手(1年)が一、二塁間を破る勝ち越し2点適時打を放ち、息詰まる接戦にけりをつけた。

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「聖光野球」らしく最後は気迫と執念だった。同点で迎えた8回2死二、三塁。背番号「19」を背負う三好が右打席に立った。「自分で決めるの気持ちではなく、思い切りいくだけだと思って打席に立った」。わずか2球で追い込まれるも、しぶとくファウルで3球粘る。カウント2-2からの8球目。外角直球をはじき返し、打球は一、二塁間を抜けていった。一塁上で「よっしゃー」と雄たけびを上げ、勝負に懸ける情熱がほとばしった。

三好 集中しすぎていて(打席を)覚えていない。秋の大会を取りに行くぞと臨んで、勝てたのでホッとした気持ちです

三好のバットが、チームの窮地を何度も救ってきた。今大会初戦を延長10回の末に制した磐城戦(15日)では7回に代打同点ソロを放ち、続く郡山商(22日)との3回戦では同点適時打をマークするなど、ここぞの切り札として力を発揮し続けた。「スタメンでも、途中出場でも、自分のやるべきことに集中するだけ」と1年生ラッキーボーイは頼もしく言い切る。

新チーム始動時には「力のない世代」と呼ばれた。赤堀颯主将(2年)を中心に選手間でミーティングを何度も重ねて、本音でぶつかり合った。結束力を高めて一致団結したナインが、3年ぶり秋の頂点に返り咲いた。試合後は、ベンチ前で涙ながらに抱き合って、喜びを分かち合った。赤堀主将は「自分にチーム作りを任してもらい、選手間で語り合った。優勝して言葉では言い表せない涙が出てきた」。名門の主将としての不安と迷いから、吹っ切れた瞬間でもあった。

今夏の福島大会準々決勝で光南に敗れ、14大会連続甲子園出場を逃した3年生たちがスタンドに駆けつけてくれた。赤堀主将は「先輩たちの前で負けるわけにはいかなかった」と応援を背に、勇姿を届けた。

さらなる頂へ-。来春のセンバツ出場を目指す聖光ナインの戦いは、これからが本番だ。【佐藤究】