東京学館新潟が1983年(昭58)の創部から39年で春、夏、秋を通じて初の県制覇を果たした。日本文理に8-7で逆転勝ち。6-7と追い上げた7回裏2死満塁で7番・新田龍生左翼手(3年)の中前2点適時打で逆転した。日本文理は3番中堅で打撃専念のプロ注目の田中晴也投手(3年)が先制ソロ、満塁の2打席連続本塁打を含む5打数3安打で6打点と爆発も押し切れなかった。東京学館新潟は福井で行われる北信越大会(6月4日開幕)に出場する。

新田がほえた。盛り上がる一塁側ベンチのチームメートに向かって拳を突き上げた。2点を返して1点差に追い上げた7回裏2死満塁。日本文理の先発、村越仁士克投手(3年)の初球、外角低めのスライダーをとらえる。「振るしかないと思った。芯に当たって抜けてくれた」。中前への会心の一打で2者が生還し、逆転。東京学館新潟初の県王座を引き寄せた。

決勝の大舞台で4打数3安打で3打点。準決勝の中越戦後、雨天順延もあり、中2日空いた。その間の自主トレでは打撃投手を相手に約1時間打ち込んだ。「外角への対応を意識した」。練習でやってきたことを打席できっちり形にした。

旅川祐介監督(40)は「力を抜いて打席に入れるようになった」と言う。新田は準決勝までの5試合で20打数5安打1打点。4回戦の新潟産大付戦で左中間へソロ本塁打を放ったが、3回戦までは1安打。力んで凡打を繰り返した。旅川監督のアドバイスでリラックスを心掛け、「バットを動かしながら構えるようにした」と新田。フォームを修正し、決勝に臨んでいた。

新田の一打は東京学館新潟打線の象徴でもある。日本文理・田中の2本の本塁打で0-5と引き離された。それでもナインは諦めなかった。6回裏に4点を返し、2点を追加された直後の7回裏は2死から3安打。「チャンスの時こそ冷静に。そこを鍛えてきた」。新田の前に追い上げの左前2点適時打を放った4番上村泰雅一塁手(3年)はチームの集中力の高さを感じた。

昨秋の県大会準決勝で6-7で敗れた日本文理へのリベンジより、普段の力を出すことを大切にした。北信越大会でもそれを継続する。新田は「少ないチャンスを生かす野球をして上を目指す」。浮かれずに次のステージに目を向けた。【斎藤慎一郎】