担当記者が推す全国の有望選手を紹介する高校野球特集「ピカイチ」連載、第2回は「打者編」。

強肩強打の捕手として今秋のドラフト候補に名を連ねる市船橋(千葉)・片野優羽捕手(3年)は、高校通算27本塁打、遠投110メートルで二塁送球タイムは1秒85。全国では無名だが、この夏、15年ぶりの甲子園出場を決め、全国にその名をとどろかせる。

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184センチ、94キロの大きな体でフルスイングすると、打球は市船橋グラウンドの左翼後方、約130メートル離れた部室棟を直撃した。片野の打撃練習を目で追う同校OBの海上雄大監督(40)は「僕が知っている中で片野の飛ばす能力は一番。別格」と目を丸くした。

春の県大会では打率3割3分1厘。高校通算30本塁打も「引っ張る打球が多かった。もっと長打を打ちたい」と後ろの右足に体重を残すフォームに改造。「トップを作り自分の間でコースに対応できるようになった」。主砲としてチームを勝利に導く準備は万全だ。

小さいころからの夢をかなえる時がきた。小3で野球を始めると、地元ロッテのファンに。何度もZOZOマリンに足を運び観戦した。「僕もいつかこの舞台で野球をしたい」と描いた。中学では「体を大きくして土台を作る」と食事の量を増やし、身長も14センチ伸びた。高校入学後は食育にも興味を持ち「糖質を抑えタンパク質を多めに取る」と主食を麦ご飯に変え、野菜の種類にも気を配り、体脂肪率は15%。筋力トレーニングを増やし質の高い筋肉を増やした。

大きくなった体を、思い通りに動かすための技術も日々学んでいる。OBで元巨人の伏島良平コーチ(52)には捕手として送球の指導を仰ぎ、安定したスローイングが身についた。

成長段階の片野を海上監督は「まだ3割の力しか出せていない。これからもっと大きく」とその将来性に期待を寄せる。片野は「プロを目指し今夏は勝負をかけます」。未完の大器が、この夏、大きな花を開かせる。【保坂淑子】

◆片野優羽(かたの・ゆう)2005年(平17)1月29日生まれ。千葉県船橋市出身。小3から田喜野井ファイターズで野球を始める。御滝中時代は白井中央ボーイズに所属。市船橋では1年秋からベンチ入り。目標とする選手は、打者では巨人岡本和、捕手ではソフトバンク甲斐。笑顔を絶やさずコミュニケーションを取るのが得意で、好きな芸能人はダウンタウン。185センチ、95キロ。右投げ右打ち。

◆「20歳のソウル」メモ 俳優神尾楓珠(23)が主演を務める映画(秋山純監督、5月27日公開)。市船橋に代々受け継がれる応援曲「市船soul」を作曲し、がんのため20歳で亡くなった浅野大義さんの実話を映画化した。吹奏楽部の絆を描いている。

○…二松学舎大付(東東京) 3季連続の甲子園出場へ、主軸の瀬谷大夢外野手(3年)が打線を引っ張る。今春センバツは初戦敗退。「自分の弱さを感じた」と見つめ直した。練習試合からチャンスで回ってきた打席での1球にこだわり、市原勝人監督(57)も「勝負強くなった」と認める。昨秋、今春と都大会はどちらも準優勝。「あと1勝で悔しい思いをした。夏は絶対に優勝したい」と話す。

○…桐蔭学園(神奈川) 相沢白虎内野手(3年)は「走攻守の3拍子(すべて)が売り」と力を込める。50メートル走5秒9。高校通算18本塁打。遊撃手を任されており、片桐健一監督(48)は「粘り強い。華麗な守備と言うより、球際を諦めなかったり。泥くさい」と信頼を置く存在だ。23年ぶりの夏甲子園へ「打撃では好機で1本。守備では『ここは0点で抑えたい』という所で必ず守るのが役割」と意気込んだ。

○…横浜隼人(神奈川) 前嶋藍捕手(3年)は、二塁送球1秒82、遠投105メートルの強肩を誇る扇の要だ。「1つ1つのジェスチャーだったり、投手をコントールする部分が目標」と、DeNA嶺井に憧れる。打者としても高校通算12本塁打と、攻守にわたってチームを引っ張る。目指すは09年以来の聖地。「神奈川の頂点、甲子園出場を目指している。何としてもつかみたい」と真っすぐな目で話した。