岩手で全国屈指の「矛盾対決」が実現する。花巻東の2年生スラッガー、佐々木麟太郎内野手が、巨人岡本和真内野手(26=智弁学園)超えの高校通算74本塁打(公式戦14本、練習試合60本)を決めた。準々決勝の水沢戦に「3番一塁」で出場。4回の第4打席に今夏1号となる2ランをマークするなど、5打数4安打4打点と大暴れした。チームは18-1の5回コールドで5年連続(20年独自大会含む)の4強入り。23日の準決勝では盛岡中央の最速152キロ右腕、斎藤響介投手(3年)と公式戦初対決を迎える。

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佐々木麟が高校通算73発の巨人岡本和を超えた。持ち前のパワーで逆風を跳ね返した。14-0の4回1死三塁、カウント2-2からの5球目。内角から入ってきた95キロカーブに泳がされながらも、最後は右手で右翼芝生席まで押し込んだ。「ヒットを目指す延長線上で打球が伸びてくれたと思う。結果的に入ってくれて良かったです」。公式戦6試合ぶりの1発。表情を引き締めたまま、約25秒かけてダイヤモンドを1周した。

今や日本球界を代表する大砲を智弁学園時代から見てきた。「非常に素晴らしいバッティングをしていて尊敬してます」。その存在を本塁打数では抜き去ったが「本当に(本塁打)記録にこだわりはないので」と言い切る。

父・佐々木洋監督(46)が花巻東を指揮していることもあり、小学生時代は長期休暇を利用して同校グラウンドで白球を追った。午前練習が終わると選手たちと一緒に昼食。「お兄ちゃんたちはこれだけ食べるんだぞ」と声をかけられ、食事量は高校生にすぐ追いついたという。当時から続ける食トレが驚異のパワーを生んでいる。

完全復活は間近だ。この日の4安打4打点含む今大会通算は12打数6安打1本塁打5打点。昨年12月に両肩の胸郭出口症候群手術を受け、打撃の状態が思うように上がらなかった。佐々木監督は「手術以降、感覚がずれたり、体の硬さがあったり、それが取れてくると今度は手だけが動いたりという微妙な加減があったが、だいぶ良くなってきた」と変化を感じている。

準決勝では150キロを連発する盛岡中央の斎藤と向かい合う。初戦敗退した今春センバツは市和歌山の最速149キロ右腕、米田天翼(つばさ)投手(3年)に4打数無安打2三振と封じられた。次戦に向けて佐々木麟は「ヒットでチームの得点につなげて、1戦1戦勝てればいいと思っています」。150キロ投手との公式戦対決は初。剛腕攻略へ怪物スラッガーの真価が問われる。【山田愛斗】