現校名10年目の節目での「聖地1勝」はかなわなかった。能代松陽(秋田)が聖望学園(埼玉)に2-8で敗れ、初戦で敗退した。1回戦に登場した東北勢4戦4勝の勢いに乗りたいところだったが、2回から4イニング連続で失点と苦しい展開。4点を追う6回、大高有生内野手(2年)がチーム初安打を放つと、斎藤舜介内野手(2年)が中前適時打で2点を挙げ、意地を見せたが、終盤に突き放された。21年夏の県1回戦敗退から始動したチームが「NOSHO」のユニホーム姿で躍動した。

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2-8と6点を追う9回2死。連打で一、二塁の好機をつくったが、加賀谷恭外野手(3年)が左飛を打ち上げ、試合終了。現校名での初勝利は来年以降に持ち越しとなった。田中元輝主将(3年)は「能代商の時に2回勝っているので、まずは3勝を目標に、日本一を目指していましたが、初戦で負けて悔しい」と無念さをにじませた。あえなく夢は散ったが「最後まであきらめることなく、全員で粘り強く戦えた」と振り返った。

同校は「能代商」として出場した11年に2勝を挙げ、16強入り。13年に能代北と統合し「能代松陽」となった。今年は勝利を挙げることはできなかったが、意地は見せた。4点を追う6回1死。5回まで無安打に抑えられていた打線は、大高の中前打を皮切りに2安打1四球で満塁とし、斎藤が2点中前適時打。斎藤は一塁上でガッツポーズし、両手で胸の「NOSHO」をなぞってアピールした。

昨夏は県1回戦で敗退。新チームとなり、そこから「逆襲の1年」を過ごしてきた。工藤明監督(46)は「負けた当日に田中が『このままじゃいけない、絶対に勝てない』と言っていて、チームを改善させるという強い意志が見えたので、何も言う必要はないと思った」。選手たちが掲げた秋の目標は「全県優勝」。「『絶対に優勝します』と言いに来たので、気持ちが強い選手が多いと感じました」。有言実行するためにチーム一丸となって奮闘。しっかりと秋の頂点をつかみ、結果を残して自信をつけた。

春8強で秋田大会は第5シードで臨み、準々決勝以降は、すべて逆転勝ちで頂点まで駆け上がった。夏の戦いが終わり、指揮官は田中主将について「元々リーダーシップのある選手だが、『チームをまとめ上げる』という強い気持ちで、苦しみながらもまとめてくれた。本当にいいキャプテンでした」とねぎらった。

試合後、田中主将はこの日活躍した2年の大高と斎藤に「来年は絶対に勝てよ」と伝えた。思いを託された2人は口をそろえ「絶対に勝ちます」と応えた。「この経験を生かしてこれから2度、3度甲子園で勝てるチームを目指していきたい」と工藤監督。「能代松陽」として新たな歴史を刻むべく、来夏への挑戦は始まった。【相沢孔志】