ノーシードから激戦区埼玉を勝ち上がった聖望学園の勢いが、止まらない。16安打8得点を奪い8-2で能代松陽(秋田)に勝利。夏の甲子園では、8強入りした03年以来19年ぶりの白星を挙げた。エース右腕の岡部大輝投手(3年)が、5回まで相手打線をノーヒットに抑える好投。試合中に投球フォームを修正する冷静さで2失点完投。2回戦は大阪桐蔭と対戦する。

 

甲子園のマウンドで、岡部は小さくガッツポーズを決めた。9回2死一、二塁から、左飛に抑えて試合終了。「ピンチになっても踏ん張ることができた。夢の舞台に立てたのでうれしいという気持ちでいっぱい」と笑顔を見せた。岡本幹成監督(61)は「粘り強く、1つのアウトをしっかり取ってくれた」と話した。

低めに丁寧に、ボールを集めた。初の甲子園のマウンドに苦労し序盤はボールが高めに抜けたが、踏み出す左足をゆっくり着地するように修正し、制球力を取り戻した。5回まで奪三振0ながら無安打無失点。大記録の達成が頭をよぎった6回1死、許した初安打から2失点。「意識すると、いいことないなと思いましたね」と苦笑いした。

地方大会の初戦から8戦目、投手歴3年のエースが19年ぶりの白星をつかんだ。おとなしい性格で、友だちが入るからと始めた少年野球。父学さん(44)は「自分次第だぞ、やるなら本気で」と度々言ってきた。あきる野市立増戸中の軟式野球部から、捕手として聖望学園入り。遠投102メートルの強肩を見込まれ、投手に転向した。持ち味の制球力は、その体に秘密がある。チームメートからのあだ名は「ゴリラ」。気づけばウエートルームにいる。江口捕手と並んでチーム内トップの肉体の持ち主だ。

次は大阪桐蔭戦。「当たっていく感じで、自分たちの力をすべて出し切りたい」とぶつかる覚悟だ。聖望学園の夏は、まだ終わらない。【保坂恭子】

▽聖望学園・大橋(持ち味の好守備で岡部を支え)「岡部が頑張っていたので、自分のできることは1つずつアウトにすること。自分も頑張りました」

▽聖望学園・荒江(2回に先制適時打)「(データ班の)2-2の後はストレートというデータはだいぶ役に立った。埼玉大会からずっといい情報を教えてくれて助かっている」

▽聖望学園・園山(地方大会は打撃不振も、3安打2打点)「県大会ではチームに迷惑かけて、甲子園で絶対に打ってやると思っていた。まっすぐを強く振る練習をしてきた」