3度目の甲子園春夏連覇を目指す大阪桐蔭が、苦戦しながら旭川大高(北北海道)との初戦を逆転勝ちした。1回に大阪大会を通して今夏初めて先制され、3回に2ランを浴びて3点差に広げられた。好守で鳴らす鈴木塁内野手(3年)が2失策するなど守備も乱れた。それでも6回、海老根優大外野手(3年)が同点ソロ本塁打を放ち、7回には伊藤櫂人内野手(3年)が勝ち越しソロ本塁打。ミスでも動じない「想定力」が生き、同校初の秋春夏3連覇に向けて好発進した。 あの大阪桐蔭が押された。最強軍団が初めて見せた姿だった。1回に先制された。2回は鈴木が悪送球。首を傾げ、6回にも投げミスを犯した。堅守の遊撃手がうつむくと、声が飛んだ。「足、動かして、自分らしくやろうぜ」。二塁を守る主将、星子天真(てんま)内野手(3年)のエールだった。

この夏、初めて味わう劣勢だった。先制されたのは7月の大阪大会を通じて初めて。しかも先発川原嗣貴(しき)投手(3年)は3回に2ランを被弾し、3点追う展開に陥った。西谷浩一監督(52)も「どの大会も入りは難しい。向こうは攻めてくる。受ける形になってしまった」と話した。

指揮官は選手に言った。「しっかり組み直そう」。3回に2点をかえした。選手はベンチで口々に言った。「粘って粘って後半勝負やぞ」。池田のスライダーなどに苦戦したが冷静だった。「後半勝負」には根拠があった。バテる頃を一気に攻め落とす-。6回、浜風に乗った海老根の同点ソロが号砲だ。7回は伊藤の左翼へのアーチから4連打で3点。勝負を決めた。

「想定力」があるから、瀬戸際で踏ん張れる。海老根は言う。「初戦の難しさがある。ミスも起こる。ミスも頭に入れてやっています」。普段から失敗も織り込み済みでプレーしているから、浮足立たない。関係者は「エラーが出て、次、どうするかの声を掛けている」と明かす。誰かがミスをしても誰かが取り返す。「次は俺が捕るわ」。「次は俺が打つからな」。こんな声が当たり前のように出るのが22年世代の強みだ。

星子主将は「次の者がカバーしあうチーム」と胸を張る。昨秋の明治神宮大会で優勝。センバツも制した3月、西谷監督は言った。「高校野球は秋から春にかけて大きな山がある。いったん下りて、夏の違う山をしっかり登っていくことが大事」。秋春夏の3連覇は、怪物松坂を擁した97~98年の横浜しかなし得ていない。大阪桐蔭が“3つ目の頂”へ、力強く一歩を踏み出した。【酒井俊作】